倉沢は2012年に行われたジャカルタ州知事選挙の関連映像の収集と分析を行った。政治的には従来の政党政治中心の構図が崩壊した事例として注目されたが、メディアを効果的に利用した新人候補が当選しており、政治に果たすメディアの役割が変化してきたことを示す好例となっている。ほかに、前年度までの研究結果の補足作業として、2009年の国政選挙(4月)ならびに大統領選挙(7月)に際してコマーシャル枠で放映された各政党の選挙広告(14政党分計94編)ならびに、総選挙委員会や内務省などからの投票呼び掛け、選挙人登録、投票方法などに関する通達などの内容分析(録画・翻訳・分析)を継続した。また、これらCMの認知度の高さが投票行動にどのように繋がっていったかという点の考察を昨年度の調査結果の整理を通して行った。これに関しては認知度の高い政党に投票したという関連性は特に見いだされず、むしろ人脈や口コミの投票依頼が投票を決定するうえでの大きな要因になったことが判明した。 また内藤はインドネシアの地方放送の展開状況について、とくにバリ島、マレーシアとの国境にある西カリマンタン州サンバス県ならびに首都圏民放を中心に調査を進めてきた。同時に、2002年の改正放送法が規定している放送局のネットワーク化の親展状況についても追った。ネットワーク化は民放全国放送の抵抗から遅々として進んでいないが、そうしたなかでも放送局間の資本関係など提携関係が見られるようになり、インドネシアの放送市場もダイナミックに変化しつつあることを確認した。
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