研究課題/領域番号 |
22402012
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
渡辺 宏之 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (10376402)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 信託 / オフショア / 比較法 / 混合法 / 大陸法 |
研究概要 |
本研究は、信託および信託類似制度に関する法制の比較法研究を通じ、各国の私法に関する基本的な枠組みの理解と英米法のtrustに関する対応から見た法意識調査を展望した、また、欧州の周辺・辺境部分や各オフショア法域の法制・法意識を調査研究することで、様々な角度から「ヨーロッパ」の深層に根源的に迫ることを目的としている。さらに、本研究は、欧州にとどまらない世界の大陸法諸国における“信託”の導入に関する議論や理論構成を通じた、「信託の本質とは何か」の議論を、世界各国の研究者と同じ土俵で議論することを企図するものである。 本年度の具体的な研究活動としては、2012年4月12日・13日 ロンドンでTrust Law Committee主催により、キングスカレッジロンドンで開催された国際シンポジウム“The future of the Trust”に出場 英国をはじめ、世界の代表的な信託法研究者・実務家が参集するなか、研究代表者の渡辺教授が活発に問題提起を行った。また、混合法域および大陸法域における信託の受容と発展に関する、以下の論考を公刊した。 ・M.J. DE WAAL(ステレンボッシュ大学教授)/R.R.M. PAISLEY(アバディーン大学教授)翻訳 渡辺宏之(早稲田大学教授)「スコットランド・南アフリカにおける信託(1)(2)」早稲田法学88巻2号・3号(2013年) ・Francois Du Toit=渡辺宏之「南アフリカにおける信託(Du Toit教授との対話)」早稲田法学87巻4号97頁以下(2012年)・Francois Du Toit=Hiroyuki Watanabe, The South African Law of Trusts, 季刊企業と法創造34号(2013年)・ピエール・ルポール (翻訳 渡辺宏之)「信託の奇妙な運命」早稲田法学88巻1号(2013年)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、信託および信託類似制度に関する法制の比較法研究を通じ、各国の私法に関する基本的な枠組みの理解と英米法のtrustに関する対応から見た法意識調査を展望したものである。また、欧州の周辺・辺境部分や各オフショア法域の法制・法意識を調査研究することで、様々な角度から「ヨーロッパ」の深層に根源的に迫ることを最終的な目的としているが、本研究の中心をなす混合法域(mixed legal system)における信託の受容と発展について、国際的な協働の成果を先駆的に発表してきている。 また、欧州にとどまらない世界の大陸法諸国における“信託”の導入に関する議論や理論構成を通じた、「信託の本質とは何か」の議論を、欧州をはじめとした世界各国の研究者と英語にて同じ土俵で議論し成果とする研究企画であり、こうした試みは、わが国における真に国際的・先端的な研究の先陣をなすものとして、きわめて意義のあるものである。 さらに、国際的な研究活動、そしてその前提としての日本法に関する基礎資料の国際発信の意義を鑑み、主として外国人研究者・実務家の参考資料として、Japanese Law Translationプロジェクトによる、翻訳「わが国の現行信託法・信託業法の条文の英訳」(主催:法務省)を、世界中の主要な信託関係者に配布することで、わが国の信託法の国際発信と認知に大きく貢献している。 国際的な学会等においても、2010年のモントリオール・マギル大学での信託法国際シンポジウムで研究代表者の渡辺がチェアマンの一人を務めたほか、2012年にロンドンでTrust Law Committee主催により開催された国際シンポジウム“The future of the Trust”に出場 英国をはじめ、世界の代表的な信託法研究者・実務家が参集するなか、研究代表者の渡辺教授が活発に問題提起を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、「大陸法をベースとする私法の下での信託の受容と発展」といった理論的課題の検討の観点から重要性を有する地域の信託法制について、信託制度導入の沿革や歴史的背景にも踏み込んで調査を行う。具体的には、①“mixed legal system”(混合法域)において発達した信託制度を有する地域、②欧州統一との関係から信託導入の有無をめぐり議論が活発である東欧地域、③アジアで信託制度を発展させている地域、④ハーグ国際信託条約批准の一方で国内信託法未制定のため、オフショア法域等で設定された信託の国内的効力が問題となっている地域である。各国の代表的信託法研究者・実務家を結集した連携研究者・研究協力者のネットワークを通じ、比較法の方法論とそれに基づく多くの地域の信託法制に関する豊富な情報を共有して、相互連携・協力を行う。 以上の本研究方法論に基づき、平成24年度は、具体的には以下の研究活動を予定している。 ・ロシアの実地調査を行う。欧州経由で訪問する。約一週間を予定している。・ドイツのマックスプランク外国法・国際私法研究所で文献調査を行う。併せて、同研究所所属の比較法学の各専門家とミーティングを行い、本研究の方法論と具体的な実態調査のあり方について示唆を得る。約二週間を予定している。・香港の実地調査を行う。併せて、研究協力者とのミーティング・ヒアリングを行う。約一週間を予定している。 さらに、以上の調査研究およびこれまでの調査研究の結果の取り纏め作業を行う。
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