H24年度においては、研究の最終年度として、第1に政策決定過程における歳出入一体化という側面、第2に各種の所得控除において現れる個々の経済政策の遂行における歳出入一体化という側面から、アメリカ連邦所得税制改革に関して、研究資料の収集と分析、さらには研究の集約にあたった。研究過程においては、前年度までの研究資料の収集を補うために、政府機関、大学研究機関へのヒアリング調査を補足的な形で実施した。 上記の論点のうち、第1の論点については、G.W.ブッシュ政権期に採られた大規模減税立法の影響が、現在までの課税ベースの浸食においても、さらには今後の連邦所得税制改革を構想する上でも、きわめて大きく、そのことが「財政の崖」に象徴される形で現在の予算政策の焦眉の課題となっていることが確認された。この点での調査研究の成果は、「綱渡りの財政――与野党対立で深刻な財政の崖、ドル信認問題にも発展」『週刊エコノミスト』2012年9月18日号としてとりまとめ、公表した。 第2の論点については、雇用主提供年金、同医療保険に対する所得控除、さらには住宅取得控除が政策的な中軸を占めること、さらにはこれらの控除の意義が、実体経済面、金融経済面の両側面から検討されるべきことが確認できた。その研究成果としてのとりまとめは今後、論文、学会報告として公表していく予定である。
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