研究課題/領域番号 |
22402027
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
高橋 基泰 愛媛大学, 法文学部, 教授 (20261480)
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研究分担者 |
平井 晶子 神戸大学, 大学院・人文学研究科, 准教授 (30464259)
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キーワード | 「家」 / 西洋村落社会 / 対比研究 / 住居 / 市場経済形成期 |
研究概要 |
本年度はまず、主要メンバーの多くが在住する東日本における震災の影響から、西洋における「家」の発見累積研究会を経て回復するところから出発している。その間も海外現地研究者の暖かな励ましに支えられた。昨年度繰越による国際シンポジウムを半年遅れで9月に開催する準備段階として、神奈川大学経済学部佐藤睦朗准教授の同行で、スウェーデンにおける研究動向調査をおこない、また今後の比較研究の対象となりうるフィールドを視察した。他方、研究対象地の1つである上塩尻村(長野県)では、これまでほとんど知られることのなかった春原(すのはら)家について、前自治会長である山崎忠男氏の周旋により、あらたに調査を開始している。また、上塩尻西隣接村である下塩尻村における史料発掘も行い、下塩尻山根地区沓掛氏および中島地区母袋氏の所蔵する大量の文書を発見した。その過程において、「家」の主たる要素である家業・家産・家名・家格のうち、後者2つと直接関わる墓地のあり方について、旧上田藩全体における共同墓地の悉皆調査という着想を得ることにもつながった。英国においては、やはり社会経済データベースが生成済みのウィリンガム教区を含むケンブリッジ州全体の検認遺言書約30000件および同州の教区登録簿データ集も用いて、系譜群データ生成を進めている。さらに、方法論の確立のために、業績1の論考の公表とともに、基本資料としてM・スパフォド著『コントラスティング・コミュニティーズ』の一部翻訳を前年度に引き続けて行った(『国際比較研究』第8号に収録)。なお、9月の国際シンポジウムを受ける形で2月に、イギリス・ケンブリッジ大学およびドイツ・ミュンスター大学にて国際セミナーを開催し、そこにおける議論を通じ、日本の「家」の特性をあえて対比的に西洋社会における家族・世帯とを捉え返す試みは、大いなる興味と関心を持って迎えられることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は東日本大震災による影響で主要メンバーの多くが東北地方在住ということもあり、概ね5ヶ月ほどの遅れをみたが、その後、国際シンポジウムの開催を経て、研究会も累積させて、問題意識を深化させている。年度終わりには主要メンバーが渡航し、国際シンポジウムで行われた議論に対してのコメントを含め、新たなデータ・研究視角の導入を果たし、現地研究者との「対話」を発展させている。
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今後の研究の推進方策 |
4月に国際学会での報告を研究代表者および分担者とで行い、日本からの「家」という観点の導入により、これまでのヨーロッパにおける研究蓄積を活用することについて、種々の可能性を見出すことができた。今後は、再び欧州から専門家を招へいし、これまでの議論の上にたった国際セミナーを累積的に重ねるとともに、国際学会でのセッション報告および昨年度の国際セミナーで示唆のあった、ドイツにおける隠居家屋についての実地調査をおこない、対比的に検討する。また、これまでの成果をまとめる論文集の出版にむけて準備を開始する。
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