本年度は、ブラジルにおける日系人労働力を集めている日系旅行社およびエージェントの聞き取りを中心におこなった。104のブラジルで日本就労希望者を集めていた日系旅行社およびエージェントに現在のブラジルでの募集活動の実態を聞くことができた。ブラジルの経済発展にともなって、かつまた長引く日本の景気低迷によって、日本よりもブラジルで雇用機会が増加していることで、日系旅行社・エージェントの人集め機能は驚くほどに低下していることがわかった。実際、聞き取りをおこなった104の旅行業者のうち、現在でも日本へのデカセギ就労者を集めることを事業としている者はおよそ30に過ぎず、半数の者はデカセギビジネスに関わることから全く離れてしまっており、拡大する内需に頼った国内旅行業を中心とする業態に変わってしまっていた。しかしながら、観光業をメインとする旅行業への大規模な転換が見られる一方で、旅行業者たちはこの傾向が長期的に続くとは考えなく、サッカーワールドカップとオリンピックが開催されるまでの限定的な現象であると考えている者が多かった。 このように観光旅行業への転換が第一の変化であるが、ブラジルでの雇用の増加は、日本の不景気で仕事が減ることによりデカセギ者の帰国者を増加させている。デカセギ旅行社のなかで、従来の日本就労の手伝いをビジネスとするのではなく、デカセギ帰国者がブラジルでの仕事に就くためのビジネスが開始されている。こうした帰国者相手のサービスを開始している事業者10社に話を聞くことができ、デカセギビジネスが日本就労ばかりでなく帰国者をも対象にしたものに変わってきていることを確認した。
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