本研究は、東アフリカ・ウガンダ共和国のアルバート湖岸地域における移民社会において異民族と共生するなかで構築される共同性の解明、共同体への新たなアプローチの提言を目的としている。本年度は、①アルバート湖、西ナイル地域、ルワンダ共和国でフィールドワーク、②共同体理論を検討するための研究会実施、③フィールドワークの資料の映像編集、④映像祭への出品(落選)、⑤研究成果を共有・公開するためのホームページの充実を実施した。 ①の実施により、漁労省(ウガンダ政府)による漁労と市場管理の強化に伴って生業の転換(漁労から綿花栽培へ)、居住地の変更(漁村から他の漁村へ)が加速していること、また漁民だけはなく魚の流通・販売にかかわる人々が魚マーケット開催日を戦略的に変更していることが明らかになった。マクロな社会変化のなかで、村内のミクロな生活世界では漁労民のアルル人と牧畜民のルワンディーズ人の対立が先鋭化し、殺人事件へと発展した。②では、こうした状況下において、共同体の維持と共同性の構築は可能かを議論した。その結果、アルバート湖を大湖地域の一環として位置づけ、歴史的視点の導入を試みることが提言された。そこで2013年2月に、ルワンディーズ人の送り出し先であるルワンダ共和国でフィールドワークを実施し、牧畜民の移動に関する歴史的な経緯について情報収集を行った。③の実施により、フィールドワークによる研究成果の一部を、ウガンダ共和国の研究協力者たちと共有し、議論することができた。映像資料と調査地における関係性を基盤にして、共同体へのアプローチを深化させる試みは、共同体への新たなアプローチとして評価できる。 ④⑤の実施により、映像祭での上映には未だ至らないものの、国内外の人々に研究成果を発信することができた。 4年間に渡る本研究課題の成果について、2014年5月のIUAES第18回大会で報告をする。
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