研究課題/領域番号 |
22402049
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
柴山 真琴 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (40350566)
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研究分担者 |
高橋 登 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00188038)
池上 摩希子 早稲田大学, 日本語教育研究科, 教授 (80409721)
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キーワード | 教育系心理学 / 二言語形成 / 日系国際児 / 質的研究 / 日誌法 / 言語検査 / フィールドワーク |
研究概要 |
本研究は、二言語の会話力と読み書き能力が大きく変化する幼児期から児童期の二言語形成過程を継続的・多層的に捉え、これまでブラックボックスのままであった二言語形成の実践過程を、ドイツ居住の独日国際児の事例に基づいて具体的に解明することを目的としている。そのために、以下の3つの調査を3年間にわたって継続的に行う。 [調査1]日誌法による日常活動の記録 [調査2]対象児の通学校他でのフィールド調査 [調査31日本語とドイツ語における会話力と読み書き能力の測定 平成23年度は、研究計画に基づいて、上記調査を以下のように実施した。いずれの調査においても貴重なデータを収集することができた。 [調査1]二言語発達上重要な年齢の子どもがいる独日国際家族の母親に依頼して、日誌法による観察データを継続して収集した。 [調査2]2011年10月27日~同11月3日まで、ドイツ・バイエルン州で海外調査を行った。対象児が通う日本語補習授業校および現地校で、授業参観・教師との面談・資料収集を行った。また、国内調査として、東京横浜独逸学園でフィールド調査を行った。 [調査3]日本語検査(ATLAN・読み課題・読解課題・お話作り課題・作文課題)とドイツ語検査(ELFE、お話作り課題・作文課題)を行い、対象児の二言語の発達状態の2年次測定を行った。 いずれの調査データについても、年度末に中間分析を行い、研究討議を行った。また、前年度のデータ収集と分析に基づいて、学会発表と学術論文誌への投稿も行った(1編は既に採択が決定している)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、二言語における学力言語能力の基底部分が重なっているという前提(「二言語相互依存仮説」(Cummins,1979))に立ち、幼児期・児童期の独日国際児が会話力に支えられて読み書きができるようになっていく過程を具体的に検討することを目的の1つとしている。2年間の調査で収集したデータとその分析から、1)学校での学習経験や家庭での宿題・読書活動を通して、談話の中に読み書き能力(学習言語能力)を支える要素が徐々に組み込まれてくること、2)特に継承語である日本語の読み書きの習得では、家庭での宿題の定期的遂行と日本語母語話者の母親による継続的な支援(日本語会話を手段にした協働)が不可欠であること、がわかってきた。その一方で、対象児の二言語力の発達過程を把握するためには、書く力の測定も必要となり、本年度から作文検査を加えた。バイリンガル児を対象にした作文検査は国内で標準化された検査がないため、作文力の測定材料の作成に時間がかかった、次年度は作文課題の改良と並行して二言語検査を実施する必要があるため、上記のように自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
来年度も基本的には研究計画に基づいて、3つの調査を通して3年次のデータ収集を行い、データ分析を進めていく。微修正点としては、初年度が終わった時点で、対象家族のうちの1家族が日本に帰国したことにより、継続調査のために国内調査も併せて実施する必要が出てきた。今年度は、研究費の範囲内で何とか国内調査も組み入れることによって不測の事態に対応し、全対象児について2年次データを継続して収集することができた.来年度も、海外調査と国内調査の両方を行うことで、対象児の縦断的データを収集する予定である。
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