本研究の目的は、海外各国のIFRS(国際会計基準)教育を調査分析することにより、IFRS教育の体系とリテラシーを構築し、より効果的な教材開発を行うことにある。その結果、グローバルな会計専門家を育成する学士・修士課程教育を充実させ、ひいてはIFRS設定主体の基準設定プロセスに関わる日本の国際的地位向上に貢献する。 平成22年度は、インドネシア、アメリカ(IFRS未適用国)、韓国(IFRS適用国)のIFRS教育をめぐる現状と課題を中心に、研究機関所属の会計スタッフを対象とするフィールド調査を実施した。 インドネシアで実施した調査によれば、教育機関としてIFRS教育のカリキュラム・シラバス開発を実施している大学は今回調査対象11校のうち1校であり、大半の調査研究機関ではIFRS教育の具体策が講じられていない。またインドネシアが2012年にIFRS適用を決定したことを受け、教員の勉強会やセミナー実施など教員と教材の質的整備を始めたばかりの大学が複数である。質的な部分では、地方大学におけるIFRS教育の問題点として学生の語学力不足や大学予算の関係で教育環境の整備が難しい現状があった。 アメリカでは、2011年中にIFRSを適用についての動向が決まる予定であり、IFRS教育への対応は研究機関、教員、地域の各レベルで差があるようである。ただし、2011年1月1日からアメリカ公認会計士(US CPA)試験がIFRSを含めた試験内容に改訂されるなど、大学、実務界、学界、監査法人等の会計専門家教育においてすでにIFRSが重要な位置づけになっている。
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