研究概要 |
本研究の目的は,フィンランドの数学教育に焦点を当て,授業,教材,教員養成等の観点から総合的に調査を行い,数学的リテラシーを育成するという視点から,日本の算数・数学教育への示唆を得ることである。そのために,今年度は以下のフィンランド視察を2回実施した。 (1) 第1回視察 2010年9月6日~12日 (1) 国家教育庁・数学科教科調査官との国家カリキュラム作成に関するインタビュー調査 (2) 2つの公立小学校での授業観察及び授業後の授業者へのインタビュー調査 (3) 小学校教員養成大学での大学教員へのインタビュー調査 (2) 第2回調査2011年3月7日~13日 (1) 大学附属中学校での教育実習生の授業観察および授業者,指導者へのインタビュー調査 (2) 大学附属高等学校での教育実習生の授業観察および授業者,指導者へのインタビュー調査2回の視察結果から,フィンランドの数学教育に関して以下の特徴を明らかにすることができた。 ア. 算数・数学の国家カリキュラム作成の理念として,「問題解決能力の育成と,将来の進路に備えるために,具体的な目標や内容を定める」点が挙げられる。 イ. 観察した算数の授業において,「自分で答え合わせをする」,「グラフの軸や目盛りを自分で設定する」などの活動が特徴的であった。 ウ. 小学校教員養成に関する特徴として,「教育実習が充実していて,特に算数や国語を重視している」,「実践面と同時に研究面を重視した教員養成カリキュラムである」等の点が挙げられる。 エ. 中学校,高等学校の教育実習の指導の仕方は日本の場合と類似していて,授業前に授業の進め方を検討し,授業後に,指導者がいくつかの観点に基づいて実習生の授業を評価していた。
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