研究課題
高速拡大海嶺系のオフリッジ火山群の産状はほとんど未知であり,定置過程や大量のマグマ発生,海嶺軸部と組成の異なるオフリッジマグマ生成プロセスの解明は,マントルダイナミクスの包括的理解に不可欠である。23年度は分担者笠谷が中心となって断層の発達した熱水系での詳細な比抵抗調査を目指し,受信機となる海底電位差計の製作と信号源となる電気探査装置の送受信ケーブル配置の検討を行った。信号源となる電気探査装置をJAMSTECのROVに搭載し,断層系および熱水域での試験観測を実施し,熱水に関連する兆候を検出することに成功した(Kasaya et al., 2011, Exploration Geophysics)。3.11の東北沖地震以来,海洋研究開発機構の研究航海が東北沖の地震関連探査に集中投入され,他の研究航海の日程の確保が困難になっている情勢を考慮し,不測の事態に備えた代替案として前年度に引き続き,既存の14°S巨大溶岩原・オフリッジ火山群のビデオ画像・音響探査データ及び岩石試料,深海掘削第1256孔のコア試料,オマーンオフィオライトの巨大オフリッジ溶岩の産状・岩石試料の分析・解析を行った。深海掘削サイト1256の最上部を構成するオフリッジ巨大溶岩の詳細なEPMA元素マッピングによって,NMORB及び EMORBマグマから晶出した輝石結晶が地殻下部で混合した後,噴火・定置した過程が明らかとなった。また,オマーンオフィオライトの巨大溶岩流は現在の海洋底の調査では得ることができないオフリッジ巨大溶岩の詳細な内部構造を知ることができる利点があり, 14°S巨大溶岩流の定置過程の解明に欠かせない補完的な情報を得ることができる。この解析の結果,地溝を埋めて流下した溶岩ローブは,合体・融合しつつ一つの巨大な溶岩チューブを形成し,溶岩チャンネルは発達しないことが判明した。
3: やや遅れている
当初計画した地殻深部~モホの電気伝導度探査等の深部構造探査を実施するのに十分な航海日程を確保できなかったため。
本研究の目的は,1)オフリッジ巨大溶岩流の産状・定置過程,2)オフリッジマグマの特徴と成因,3)マグマ溜りの分布と規模を明らかにすることである。3を達成するために地殻深部~モホの電気伝導度探査等の深部構造探査を計画していたが,「9.実績」に記した事情から十分な航海日程を確保できなかった。しかし,海洋調査では海況など様々な原因で計画通りに行かないことは想定されることである。そこで計画通りに進まなかった場合の代替案として進めてきたオマーンオフィオライトのオフリッジ巨大溶岩の調査に加え,既存のデジタル情報,岩石試料の解析から,1,2については当初の目的を達成できるデータが得られつつある。24~25年度はこれまでに得られた海底と陸上の地質・岩石情報の解析をさらに進めるとともに,結果を総合してオフリッジ巨大溶岩流の定置過程とマグマの成因についてモデル化を試みる。
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http://earth.s.kanazawa-u.ac.jp/~umino/EPR/EPRGiantLava.html