研究概要 |
地震発生と地震断層近傍の応力状態は密接な関係にあり、地震断層面に作用している応力の蓄積がある限界に達すると地震が発生する。2008年に中国で発生した四川大地震は、四川省〓川(Wenchuan)県を震源とするM8の巨大地震であった。中国地質科学院の主導により、この地震の震源断層を掘削するプロジェクト(Wenchuan-earthquake Fault-zone Scientific Drilling, WFSD)がH21年11月より進行している。本研究は中国地質科学院の研究協力に基づき、これらの断層掘削のコア試料を用いて、非弾性ひずみ回復法(Anelastic Strain Recovery, ASR)による三次元応力の測定をし、現在(地震後)の断層近傍の主応力方向等に関する貴重なデータを得ると共に、応力と地震断層との関係について議論する。 計測は掘削による応力解放直後のコア試料を用いる必要があるため、中国四川省にある掘削現地の実験室で行わなければならない。H22年度の早い時期に、我々が計測システムを構築し、現地に送付して設置した。また、中国側の研究協力者に測定技術のレクチャーをし、トレーニングを行い、測定を開始した。H22年度には1本目の掘削(WFSD-1孔)において、深度500m付近から50mごとに1試料ずつ深度1200mの孔底付近までASRを実施した。現在、その結果を解析して、論文投稿の準備中である。 また、ASR手法の高度化研究として、その他の掘削サイトで同測定を実施して、掘削孔壁に発生するブレークアウトによる応力方向との比較研究等を行い、論文発表や学会発表等を行った。
|