研究課題
本研究は赤道スプレッドF現象(Equatorial Spread-F、ESFと略記)の日々変動の解明を目的としており、そのためインドから太平洋にわたる広域観測網を構築して国際共同観測に基づく研究を実施した。1年目にあたる今年度においては、主として研究代表者らが開発してきたディジタルビーコン受信機GRBR (GNU Radio Beacon Receiver)を用いた電離圏全電子数観測網の構築を推進した。その結果、年度末の時点では東南アジアにおいてベトナム4カ所、インドネシア3カ所、タイ2カ所からの観測が行われるに至った。また研究協力者であるR.Tsunoda博士(米SRI International)が本研究と呼応する形で太平洋地域へのGRBR設置を進め2カ所で観測が開始された。さらに研究代表者が他の研究費によって東部アフリカの2カ所で観測を開始したため、GRBR観測網は当初予定よりも広範囲に広がり総計13カ所に達した。本年度中にはインドネシア西スマトラ州にある赤道大気レーダーによる電離圏観測の長期連続実施が始められたため、東南アジア域の観測態勢の充実が著しい。観測網の拡充には各地の研究者との情報交換が重要であるため、数多くの国際研究集会に出席して研究内容の周知と人的ネットワークの充実に努めた。低緯度に特化したC/NOFS衛星からの受信波を用いることによって、電離圏電子密度の東西変化を検出することができる。これとVHFレーダーあるいはイオノゾンデを用いたESF活動度の組合せから、ESF発生時に電離圏の大規模な東西波状構造(Large-Scale Wave Structure ; LSWS)が生じていることが確認された。またGRBR観測データが最も長く取得されているベトナム・バクリウからのデータを統計解析することによって、ESF発生時にはLSWSの振幅と波長がどちらも増大する傾向が分かった。なお、本研究ではJAXA宇宙科学研究所による観測ロケット実験への参加を予定していたが、その観測ロケット実験が翌年度に延期された。
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