研究課題
本研究は赤道スプレッドF現象(Equatorial Spread-F、ESFと略記)の日々変動の解明を目的としており、そのためアジアから太平洋にわたる広域観測網を構築して観測を実施し、国際共同研究を推進している。今年度もディジタルビーコン受信機GRBR (GNU Radio Beacon Receiver)観測網の充実とデータ蓄積を継続した。タイのバンコク、チュンポンに新設しプーケットの受信機を好条件の場所に移動する等の改善を行った。現在、GRBR観測網は東アフリカから太平洋域まで拡大している。研究面においては以下のような成果を得た。まず電離圏全電子数(TEC)の経度分布について、経度方向に直線的な分布を仮定することによって1点の観測データから絶対TEC値を推定する方法を考案し、他の推定方法との比較から妥当性を検証した。次いで東西波長数百kmにわたるTEC変動であるLSWS (Large-Scale Wave Structure)とESFの関係を統計解析した。まとめると、1 LSWS発生とESF発生の間には相関関係があり、LSWSがESF発生の前提条件となることがより確かとされた。2 LSWSが日没よりも早い時刻に発生することが分かった。3 LSWSの振幅がE領域高度(高度110km)の日没後に急激に発達する。4 LSWSの変動の位相が地球磁場に沿う結果が得られた。5 LSWSの東西波長は200~800kmであった、との結果を得た。アジアとアフリカの比較から、アフリカ上空ではアジアに比較して強いESFが発生するが、LSWSの強度差は大きくないことを見出した。一方、太陽活動度が極めて低かった2009年においては、夜半過ぎの時間帯にESFが頻繁に観測されたが、赤道大気レーダー(EAR)の多ビーム観測データを用いてこれの時間・空間構造を解明した。さらに低緯度電離圏観測衛星C/NOFSとの同時観測から、真夜中ごろに生じる赤道向き風速の収束によって夜中のESFが発生しやすい条件が生じることを明らかにした。また、冬の極域の成層圏に現れる突然昇温が全球の電離圏に与える影響について、他の衛星観測等をもとに研究した。
2: おおむね順調に進展している
衛星ビーコン観測網の構築が予定通りに推移しており、各国の研究協力者との関係も問題ない。研究成果も順調に出ている。本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
計画通りに研究を進める。落雷や機器不調によって観測が滞っている観測点があるため、対策を進める。多様な観測データの比較に基づく研究を強化していきたい。
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