研究概要 |
本年度は,フランス南東部プロバンス地方のLe CouletおよびMoriezの各セクションにおいて野外調査を実施し,両セクションにおいてエンジンカッターを用いて黒色頁岩(OAElb層準)約4mの区間の切り出しを実施した.切り出した試料を低粘性エポキシ樹脂と歯科用石膏で固め,表面研磨を実施し,葉理や生物擾乱などの堆積構造の観察・記載を行った.同時に,前年度採集した試料と同様に1cm間隔で各分析用試料を採取した.また,フランスの共同研究者であるJean-Louis Latil博士と野外においてアンモナイト化石群集と黒色頁岩の関係を調査した結果,葉理部分ではライメリア属のアンモナイトの急激な増加が見られた. 試料の有機化学分析を行った結果,黒色頁岩の中でも葉理構造が強く発達する部分からは,緑色硫黄細菌およびメタン細菌のバイオマーカーが見いだされた.前者は絶対嫌気性の光合成細菌であることから,有光層に達する浅い水深まで無酸素水塊が発達していたことを示唆する.以上の結果は,葉理の発達する部分で底生有孔虫化石が産出しなくなるという,微化石分析の結果と一致することが明らかとなった.一方,浮遊性有孔虫とライメリア属のアンモナイトも同じ部分において増加することから,両者は有光層の上部に生息していて,栄養塩の増加によって大量に繁殖した可能性が高いことも明らかになった.
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