研究概要 |
この2年間で、浅海溶存酸素濃度の増加が多細胞生物の台頭と同時に起きたこととキャップカーボネイトの生成プロセスを、オーストラリアのキンバレー地域の地質調査とバイオマーカー(分子化石)分析で明らかにした(これらは学会発表した)。 原生代初期約20億年前に真核生物が現われ,エディアカラ紀からカンブリア紀にかけての約6億年前から約5億年前に,多細胞生物の爆発的進化が起きたことが知られている.この多細胞生物の爆発的進化の原因解明のために,オーストラリアの浅海堆積岩試料中の溶存酸素指標のプリスタン/ファイタン比分析を行った結果,5億8000万年前のガスキアス氷期後溶存酸素量の増加が起きたことがわかった.この溶存酸素量の増加は,それぞれ,海綿動物と刺胞動物などの原始的海洋動物の化石の産出期と,全ての生物門が出そろう前期カンブリア紀のチェンジャン動物群と,同層準同年代であるので,溶存酸素量の増加が海洋動物の大進化を起こしたプロセスかもしれない. 全地球が凍結したと言われるマリノアン氷期の漂礫岩堆積物の直上のキャップ炭酸塩岩の分子化石は、浅海における無酸素還元環境発達(プリスタン/ファイタン比、アリルイソプレノイド、ジベンゾチオフェン)と生物生産量増加(プリスタンとファイタンの和)を示した。このことは、光合成生物のブルーミングにより有機物が硫酸還元バクテリアに与えられ、硫酸還元バクテリアの介在によりキャップ炭酸塩が生成したことを示唆する。
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