本研究の目的は以下を明らかにすることであった。 1)衛星と地上レーダデータを用いた、永久凍土の水分量の違い、凍結・融解状態でのレーダの散乱特性の解明。 2)衛星データを用いて、永久凍土の水分量の違い、凍結・融解を広範に推定するアルゴリズムの作成 3)シベリアで凍結/融解マップを作製し、温暖化が住人の生活に与える影響を評価する。 1)2)については平成23年度までにほぼ達成した。平成24年度はこれまでの結果を元に、凍結・融解を広範に推定するアルゴリズムの作成を行った。具体的には凍結時と融解時でHV後方散乱係数が約8dB違うことを利用し、地表面が凍結しているかどうかを調べた。極域洪水が多く起こった2007年と、ほとんど起こらなかった2009年のデータで融解/凍結マップを作成したところ、2007年4月上旬に、地表面の融解急激にが起こっていることが明らかになった。ロシアの新聞情報によると、この場所より下流のMarkhaで2007年5月7日に洪水が起こっていた。今回のMarkha周辺で観測された陸域、河川の融解状況の変化を考えると、2007年は2009年に比べ、より急激に地表面の融解が起こったことが、2007年のアイスジャム洪水につながった可能性があると推定された(第53回(平成24年度秋季)リモートセンシング学会講演論文集)。また、温暖化によって引き起こされた洪水が与える影響について評価するのに使用するため、洪水が起こった箇所の検出についても、衛星データ(PALSAR/4偏波モード)を用いて行われた。そして、4偏波パラメータの内、エントロピーが有力な手法であること明らかにした(proceedings of International Symposiumon Remote Sensing 2013)。現在、これらの結果を査読付き投稿論文にまとめている。
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