研究課題/領域番号 |
22404002
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
冨安 卓滋 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 教授 (60217552)
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研究分担者 |
松山 明人 国立水俣病総合研究センター, 疫学研究部, リスク評価室長 (00393463)
宮本 旬子 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (40244222)
井村 隆介 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (40284864)
児玉谷 仁 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (30434468)
河野 百合子 鹿児島大学, 廃液処理室, 特任助教 (60582070)
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キーワード | 水銀 / 形態別分析法 / 金精錬活動 / 鉱山活動 / 大気 / 土壌 / 国際研究者交流 / スロベニア:インドネシア |
研究概要 |
本年度のインドネシアにおける調査は乾季にあたる6月と雨季にあたる2月に実施した。金精錬作業場内における気中水銀の形態別測定に関しては、6月を予備調査と位置づけ測定を行ったが、精錬作業直後の焼きだし場付近において0.999mg/m^3もの極めて高い値が観測された。また、精錬小屋周辺においても高い水銀濃度が記録されており、そこから離れるにつれて大気中水銀濃度は低下する傾向にあったが、測定を行った殆どの地点で水銀濃度は0.1μg/m^3を越えており、周辺が精錬作業により放出された水銀の影響を受けている事が確認された。この現地測定の為に導入を検討していたガス中水銀測定装置の測定結果とこれまで行ってきた金アマルガム捕集-冷原子吸光光度法の測定値は良く一致する事が確認され、特に、金アマルガム捕集では感度が良すぎて対応が難しかった高濃度に水銀を含む試料に対しては現地測定装置が有効なツールとなることが期待される結果となった。これらの結果を踏まえ、2月の調査では過マンガン酸カリウム及び塩化カリウム溶液を用いた形態別定量と組み合わせ化学形別水銀分布に関して調査を行った。現在その分析と解析を進めている所であるが、精錬小屋内では塩化カリウムに捕集される水銀濃度が高く、Hg^<2+>が作業過程で生成していることが示唆される結果が得られつつある。スロベニアでの調査は11月に実施し、スロベニア水銀鉱山周辺の土壌試料を採取した。また、スロベニア研究協力者と土壌試料水銀形態別分析法に関するディスカッションを行うとともに、当研究室において開発した方法と世界的に認められている国立水俣病総合研究センター及びスロベニアヨゼフステファン研究所の手法とで、土壌中メチル水銀測定のクロスチェックを行う合意が得られ、来年度5月にその検討会をスロベニアで行う事となった。土壌試料に対するクロスチェックは殆ど行われておらず、その結果は分析化学的にも重要な成果になると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インドネシアにおける大気を通じた水銀の拡散及び化学形変動に関して計画通りに進行している。また、分析化学的見地からの土壌中水銀形態別分析法の開発及びそのクロスチェックに関しても体制を整えることが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
スロベニア、イドリヤ水銀鉱山周辺における共同調査を5月に実施するとともに、異なる地域において採取された土壌及び底質試料に対し、スロベニアヨゼフステファン研究所、国立水俣病総合研究センターそれぞれの手法でメチル水銀を測定し、本研究において確立した分析方法と比較する。その結果を踏まえ分析方法の信頼性についての議論を行うとともに、水銀の定量法、試料採取法・保存方法など総合的な方法論について意見交換を行う。また、インドネシア小規模金採掘活動に伴って放出される水銀の環境影響についての調査は、雨季に入る12月頃に実施し、これまでに得られたデータを合わせて、大気による水銀輸送経路と河川による水銀輸送経路を整理し、水銀の移動拡散と化学形変化について総合的な考察を行う。
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