研究分担者 |
大村 達夫 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30111248)
中野 和典 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (30292519)
梅田 信 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (10447138)
真砂 佳史 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (50507895)
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研究概要 |
昨年ではメコン河の肥沃化を定量的に評価したが,可給態・非可給態の区別がなく,土壌中の栄養塩も考慮されてはいない。本年では,氾濫水および土壌中の栄養塩を可給態・非可給態に分けて栄養塩収支収支を考え,肥沃化の効果をより正確に評価することを目標とした. 現地観測によって測定された氾濫水の窒素濃度において,可給態すなわち植物が吸収できる窒素量は溶存および懸濁の無機態窒素を合計したものであり,全窒素および有機態窒素はメコン河近隣のカンダル県のほうが多いが,無機態窒素は河岸から遠いタケオ県のほうが多いことが分かった.これより,河川本流からの距離が近い地点で観測したカンダルはより多くの窒素を獲得できるが,タケオのため池までの移流時間が長いことから有機態窒素の分解が進み,タケオのほうが無機態窒素の割合が多く,無機態窒素量が多くなることが理解された.測定された土壌中の可給態栄養塩量および農林水産省の地力増進計画指針にとの比較から,カンダル,タケオ共に十分な量の可給態リン酸および可給態窒素があると言える.タケオ現地農民に行ったインタビュー調査から,タケオの農民は施肥を行うことがわかっている.河川本流からの距離が長いため,洪水氾濫によってタケオに運ばれる栄養塩量はカンダルよりも少ないと考えられるが,施肥の影響により可給態栄養塩量が多くなったと考えた. 水田における栄養塩の年間収支を,氾濫水によって水田系内に流入するもの,刈取りによって系内から流出するもの,系内の土壌に含有されているものから,推算した.その結果,窒素・リン共に氾濫水および土壌中の可給態栄養塩量の合計値,すなわち植物に吸収されるポテンシャルをもつ全ての栄養塩の量が刈取りによる流出を上回っていることがわかった.土壌には系外から流入する栄養塩量と刈取りによる流出の差を大きく上回る供給力があることも理解された.
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