研究課題/領域番号 |
22404009
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
入江 光輝 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50451688)
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研究分担者 |
梅田 信 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (10447138)
韓 〓奎 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (40455928)
柏木 健一 筑波大学, 人文社会系, 助教 (00447236)
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キーワード | 水資源 / 水工水理学 / 土木環境システム / 農業工学 / 国際貢献 |
研究概要 |
昨年度までに1貯水池で実施した調査を他の三つの貯水池でも実施した。まず、新たに3貯水池において深浅測量を実施し、元地形との比較で現状の堆砂量を評価した。堆砂速度は貯水池によって異なり、集水面積、集水域土地利用などによることが推測される。 次に底泥の土壌改良剤としての利用可能性の検討のために下水処理水灌漑地における大麦栽培実験を行った。その結果、底泥の添加によって植物の重金属吸収が抑制される傾向が見られた。そこで底泥添加量以外に土壌中の塩分量、総重金属量などについていくつかのケースを組み合わせたポット栽培実験を行ったところ、底泥添加によって確実に重金属吸着量の抑制されることが明らかとなった。 また、昨年度までに獲得したノウハウにしたがって底泥からフルボ酸の抽出を行った。底泥のフルボ酸含有量は貯水池によって差が見られた。抽出したフルボ酸について元素分析およびFT-IR解析を行った。いずれのフルボ酸も国内貯水池のフルボ酸とは若干異なる解析結果の傾向を見せているが、現地の貯水池間での化学的構造上の相違はFT-IRでは顕著には現れなかった。 抽出したフルボ酸を用いてバイオアッセイによる機能性食品等としての利用可能性の検討を行った。今回、ATP産性の向上と抗アレルギー特性について評価した。結果、いくつかの抽出フルボ酸についてATP産性向上と、抗アレルギー特性がそれぞれ確認できた。 次に底泥の粘土的性質に注目し、現地で非常に需要の高い建設用レンガの原料としての有効利用の可能性について検討した。実際に底泥サンプルを用いて焼成ピースを作成し、曲げ強度試験を行った。その結果、現在レンガ工場で使用されている粘土を用いたのと同等の強度のレンガを底泥を用いても作成できることが明らかとなった。また、底泥によってレンガ原料を代替した場合の経済的実現可能性、および持続可能性について具体的な試算を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に構築したノウハウにもとづいて複数の貯水池で同様の調査を展開できている。そして、その結果について比較論的な検討を進めつつある。当初はチュニジア以外にアルジェリア、モロッコでの現地調査の展開を予定していたが、同地域が総じて政治的に不安定になったことが影響して以前から関係の深いチュニジアを除いて他の国では新たな調査を開始できていない。現在アルジェリアは山間部に位置する貯水池の調査について治安上の理由からほぼあきらめざるを得ない状況にある。一方、モロッコでは国際会議発表を通じて現地のCPとなりうる研究者も見いだしているのでこれを頼りに現地調査を展開していきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、現地の環境条件の異なる4つの貯水池について堆砂量とその性質の概略について把握できてきている。その相違の決定条件となると考えられる流域土地利用および貯水池内の水質環境について今後精査を進めていく必要がある。流域土地利用等に関しては各流域の衛星画像データとDEMを入手し、解析を開始したところである。また、貯水池水質については現地観測を継続すると共にそれを検証データとしながら数値シミュレーションモデルにより評価を行い、底泥の量と質に関わる議論を展開していく予定である。 抽出フルポ酸の機能性食品等としての利用可能性がバイオアッセイによって質的保証がなされたが、底泥中の含有量がやや少ないので量的確保と抽出コストの問題が事業化に向けての障害になると考えられる。これら底泥有効利用に基づく製品の市場規模なども勘案し、複数の利用法を組み合わせた最適な有効利用方法を含めて検討をしていきたい。
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