研究課題/領域番号 |
22404010
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
菅 和利 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (70052884)
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研究分担者 |
大澤 和敏 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (30376941)
赤松 良久 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (30448584)
恵 小百合 江戸川大学, 社会学部, 教授 (00286189)
岡本 峰雄 東京海洋大学, 海洋科学部, 教授 (70345403)
大久保 あかね 富士常葉大学, 経営学部, 教授 (80434538)
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キーワード | パラオ共和国 / ガリの形成 / 赤土流出 / 焼畑農業 / 降雨流出 / 濁度・水位計 / 観光・環境容量 / 観光資源 |
研究概要 |
観光資源が主たる資源のパラオ共和国においては、宅地造成、農地開墾(焼畑)など土地利用形態の変化と赤土流出、赤土流出とさんご礁への影響は総合的視点から解決すべき課題である。国土保全の基盤となる農地、環境資源を活用した生活基盤の確立は重要な課題であり、パラオ共和国にとっては開発と自然資源の保全は緊急の課題である。本研究では地形、気候の類似した石垣島での研究成果の太平洋諸島の一つであるパラオでの適用性を調査するとともに、国土管理についての将来への指針を提供することを目的として現地調査を行っている。2011年度は造成地を挟む2地点での継続的な測定を行うと共に、パラオの自然環境保全への取り組みの基礎的なデータの取得をおこなった。 調査の対象流域として、空港、市街地に近く、開発の圧力が今後も強くなるであろうAirai州のNgehkiil川流域を選定した。2つの小流域間での濁質輸送の差から、造成など開発の影響が検討できる地点を選定し、水位計、濁度計、雨量計を設置し、継続的な観測により濁質輸送量の推定を行った。また、流れの様子を観測するためにGardenWatchCamを設置し、10分間隔で画像を取得している。このようにグループとして現地と連携した継続的な現地調査を行うことができ、以下の結果が得られた。 1)取得したデータ解析からH-Q曲線の作成、濁質輸送量の算定を行った。これらの結果から造成地からの流出量を算定し、WEPPモデルでの推定結果との比較ができるようになった。ループを描くQ-L曲線の特性を分析した。 2)雨量、流量は現在も継続的にデータを取得しており、分布型流出モデルでの検証を行い、良好な結果が得られた。 3)土地利用形態、営農形態を調査し、地表面侵食算定モデルでの検証に必要なデータの蓄積を行った。 4)ホテル、地元観光業者へのアンケート調査から、旅行者数と環境容量についての検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地観測データの取得、分析は当初予測したよりも困難であった。河川を農業などに利用する治水、利水の考え方が定着していないので、開発に伴う赤土の流出がサンゴ礁などに影響を及ぼす連鎖のメカニズムについて理解が乏しい。現地の住民はほとんど河道にアクセスしないために、観測のための河道へのアクセスが困難で、観測地点を確保、自動観測体制の確立に苦労したが、かなり質の高いデータを所得できるまでになった。このデータの分析により、現象の解明と定量評価へのモデル化が可能になった。また、環境保全取り組みについてのアンケート調査も順調に実行できている。当初予定した研究目的に沿って研究は順調に成果を上げてきている。
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今後の研究の推進方策 |
造成地でのガリの発生、発達、地表面の崩壊と赤土流出のメカニズムの計測を継続すると共に、モデル計算を行う。 分布型流出モデルでの計算に必要な土地利用形態の分類図は既に取得しており、透水係数など不足している数値については逆推定などで求める予定である。また、造成地からの赤土流出量のモデル計算にはWEPPモデルを用い、流域全体での流出量、赤土流出量のモデル計算を行う。このモデルに開発シナリオを組み込み、開発と自然保全とのバランスを取った開発手法についての提案を行う。社会科学的な視点からパラオのインフラ、自然保全対策、エコツーリズム、持続ある観光産業のための能力開発などについても調査を行っており、関係者が一堂に会した意見交換会の開催を計画する予定である。最終年での研究のまとめを視野に入れた進捗方策を取っている。
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