研究課題
途上国現地データの分析については、4月にチリの研究者が来日し、共同での津波による被害の比較調査を行った。7月に開催された国際海岸工学会の折に、既に依頼してあったイランおよびスリランカ海岸の津波・高潮・高波に対する災害脆弱性調査結果について、両国を研究対象としている研究者から報告を受け、災害脆弱性についての検討を行った。今後の対応技術の検討を含めてこれらの現地の研究者と共同調査を進めている。8月にイギリスに勤務するスリランカの研究者が来日し、スリランカのインド洋津波での被害の状況、復興プロセスの東北との比較についての共同研究を実施した。11月にイランに出張し、主に高潮に対する海岸の脆弱性についての研究をKNT工科大学と共同で行った。同じく11月にアメリカ、ニューヨーク市においてサンディ高潮の被害があったため、緊急の調査を行った。高潮、高波被害の将来予測を行うための気候モデルに基づいた、高潮・高波数値モデルを開発中である。気候変動が現在のペースで100年にわたり継続したと仮定して,将来の気象条件下で強大化した台風が来襲した場合に発生する高潮の危険性を予測し,沿岸域防護手法を提案した.まず手始めとして東京湾を例として検討し,算出した高潮より標高の低い地域について,失われる資産額の算出を行った.また、算定した最高高潮水位を水準とした防潮堤の嵩上や新設,堤外地の地盤高の嵩上にかかる費用の算出を行った.災害脆弱性の評価を行うために日本の東北および関東沿岸域を対象として津波の高さと到達時間に関する数値予測結果をまとめ、具体的に対策が必要となる場所を特定した。このような手法は途上国への応用が可能である。沿岸環境変化の評価については、流域から海岸に供給された砂と泥について、海岸域における波および流れによる再配置の機構を解明するための検討を行い、汎用的な数値モデルの改良を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
地球温暖化による気候変動が地域の災害に及ぼす影響が顕在化しつつあることが各地域で確かめられつつある。地域における沿岸域災害の変化機構を、地域での観察をもとに把握するために、高潮、高波などの激甚化の予測と土地状況の変化による津波被害の変化を取り上げつつあり、それらへの有効な対策を考案もしている。沿岸地域の災害環境の変化の経過を正確にとらえ、この目的を達成するには、各国の海岸工学研究者との密接な共同研究が不可欠である。本研究ではイラン、インドネシア、タイ、スリランカ、タンザニア、ベトナム、カナダ、チリのそれぞれの若手の代表的な研究者と密接に連携することで研究を進めている。本研究の特色は多数の地域での地域におけるEvidenceを総合してその機構を解明し、さらにそれぞれの地域に合った対策を提案しようとしている点にあり、それらの議論をするための調査が進んでいる。また、これらの地域に応用するための気候モデルに立脚した高潮、高波予測モデル及び海浜変形予測モデルの高度化も進んでいる。
本科研費は平成26年度で終了するが、新たに本科研費の終了後の展開を目指して、災害研究を様々な分野から推進している研究者群が早稲田大学創造理工学部内で結集し、これまでに各研究者がカナダ、イギリス、イラン、インドネシア、ベトナム、タイ、スリランカ、タンザニア、ブータン、チリなどの災害研究者と築きあげた国際ネットワークと結合することを始める。これにより1)構造物の減災、2)複合災害の減災の2テーマについて早大理工を災害研究の国際的な拠点にすることを目的に、本科研費終了後の活動を展開していく。上記の研究を実現するために、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「減災研究の国際展開のための災害研究基盤の形成」(補助金)に申請している。創造理工学研究科内に津波シミュレーション、平面津波造波設備の整備を行う。これまでに早大理工内で開発を進めてきた津波、高潮、高波などの沿岸災害予測の数値予測モデルは高度な能力を有しているが、これまでは必ずしも複数の研究者の間で共同で使用されることは少なかった。これらのプログラムに加えて、早大内で開発された災害に関する予測プログラムを集め、汎用的に使用できるように整備を始める。また、東北津波で明らかになった「孤立波ではなく、数十分にわたって継続する越流と段波」に注目して、3次元的な津波挙動を再現する実験を開始する。同時に海外研究者との共同研究を進め、早大開発予測プログラムの現地化を図ることによって、研究基盤の国際展開を図る。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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