研究課題
本年度はフィリピンにおいて、台風Yolanda(台風30号)により大規模高潮が発生したため、本研究で進めているこれまでの災害の整理結果と比較検討を行った。2013年11月にフィリピン中部を襲った台風は高潮と強風により沿岸域に甚大な被害をもたらした。レイテ島とサマル島を中心に、災害発生から約1か月後に実施した現地調査の結果を整理し、今回の災害の規模と被災状況を明らかにするとともに、近年生じた他の地域における高潮災害と比較することで、今回の災害の特徴を分析した。高潮高さはレイテ湾の最奥部沿岸の広範な地域で5 mを超えており、高潮高さが概ね3 mを超えている地点で家屋の流失等の大きな被害が生じていた。チリの研究者を招へいし、チリにおける津波の分析を東北津波と比較しつつ共同で行った。海底谷と湾という二つのローカルな地形が津波の伝播に及ぼす影響について検討した。ビオビオ川の河口にありアラウコ湾の北部に位置する海底谷が津波に及ぼす影響について、平滑化された地形における数値解析を行った。海底谷の長さ、幅、深さを、および、津波の波長を変化させて、数値解析を行った結果、海底谷は津波の伝播に影響を及ぼし、特に海底谷の長さと幅が大きな影響を与えることがわかった。さらにコンセプシオン湾における共振について検討した。湾の固有振動モードは、経験的直交関数を用いて定めた。湾の基本振動モードは95分であり、これは2010年と1877年の津波におけるスペクトル解析結果に対応していることがわかった。2次と3次の振動モードは、それぞれ37分と32分であり、これらは1960年の津波におけるスペクトル解析結果に対応していることがわかった。インドネシア、トルコに出張し、それぞれの沿岸災害対策に関する事例を収集した。アメリカ合衆国、イギリス、インドの研究者に学内でのセミナーを依頼し、事例をさらに収集している。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的に沿って各国の研究者と順調に共同研究を進めている。研究の実施期間中、2010年チリ地震津波、インドネシア・メンタワイ諸島津波、2011年東北地方太平洋沖地震津波、2012年米国ニューヨーク市サンディー高潮、2013年フィリピン・ヨランダ高潮と次々に大規模な沿岸災害が発生し、研究の事例を蓄積することができた。
本年度は最終年度に当たるため、これまでの知見をまとめるために、一部の共同研究者を国際会議の折に招集して検討するとともに、早稲田大学に海外共同研究者を招集して、知見の総合化と変動しつつある沿岸環境の中での災害への対処方法についての総括的な結論を導き出す。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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