研究概要 |
本研究は,平成24年度は3年間のまとめの年度に当たっている.平成24年度に行った調査実験を含め、概説する. 調査地点を南北方向3地域に取り,地質構造をみた結果,粒径は地層が深くなるにつれて粗くなる.表層近くの有機物の多いブラウンやブラックの粘土でヒ素濃度が高い傾向がみられ,原因は有機物や微生物の作用が考えられた. ヒ素を多く含有する地質年代は完新世の7,400年前であり,海進によるヒ素の堆積・蓄積は海由来ではなく、河川由来の可能性が高い. 吸着実験から,NaHCO3,NaH2PO4を添加した場合,炭酸イオンやリン酸イオンがAsとのイオン交換で吸着量が少なくなり,時間経過で吸着量も減少した.pHの実験ではアルカリ側で吸着量の減少した.As5+ はAs3+ に比べてAsが吸着しやすく,水酸化鉄,二酸化マンガンの相乗作用が溶出を助長した.Asに関するKd解析は,FeやAl酸化物の地下水へのAsの溶出過程の理解への基礎知見を与えた.Kdは,pH, PO4, Fe, Alと堆積物に含まれる有機炭素に依存することが判明し,PO4はSO4とHCO3に特に関連が認められた.実験からのKdはNaHCO3, NaH2PO4を添加した条件ではAs溶出を促進させて低くなり,Fe2(SO4)3を添加した条件ではAsの吸着を促進して高くなった.また,アルカリ側では添加したNa+でAsとイオン交換で吸着量は減少し,Kdは低くなった. 最終的に,深さ方向と経時的なヒ素減少の挙動を把握するために,ヒ素輸送方程式と吸脱着反応速度式を求めた.南部のKalaroaと中西部のSamtaを対象に,As輸送モデルを適用して地下水帯水層の持続可能性を評価した結果,帯水層が深いほどヒ素濃度は低下し,また,100年後には150 m 以深の帯水層のヒ素は1 μg/L以下となり,安全で,持続的な水資源になることが判明した.
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