2008年5月に発生した中国四川省の四川大地震は約7万人の死者をはじめ、多大な被害をもたらした。本研究では、広域で多様な震災被害からの住宅復興を大きく4つの類型に分けて捉え、その特徴を明らかにした。具体的には、①山間部集落の被害と復興、②都市地域での被害と復興、③農村集落の被害と復興、④集団移転による復興を取り上げた。2013年度については、前年度までの成果の上に立って、補足的調査を行い、西南交通大学林青教授と総括的議論を行った。調査内容は、第1に、都江堰市の郊外に位置する玉堂鎮水泉村における統一的な復興住宅の実測調査および居住者へのインタビュー調査をおこなった。水泉村は都市部から約10km奥地の河川沿いの斜面地にある集落であるが、個々の住宅が計画的に配置され、居住者の評価が良好であった。第2に、震源に近い文川県映秀鎮漁子渓村における復興住宅実測調査とインタビュー調査を行なった。映秀鎮は壊滅的被害を受けた文川大地震のメッカのようなところであるが、漁子渓村はその被災者の相当数を隣接する高台に移住させたものである。住宅そのものは適切に計画されているが、河川沿いの低地に位置する元の集落(町)との高低差は100m以上あり、クルマのない人々は急斜面を徒歩で行き来している。第3に、大規模な集団移転地の新北川においてインタビュー調査を行なった。山東省の対口支援で建設されたこのニュータウンは、当初、人影もまばらであったが、現在では人口が張り付き、市場や商店にも活気が見られる。復興住宅は全て7階建ての鉄筋コンクリート集合住宅である。中国の制度では7階まではエレベーターが設置されないので、高齢者には負担である。それ以上に、問題はこの新市街地では雇用がないという点である。隣接してハイテク工業団地が建設されるというが、農村部の高齢化した被災者に雇用機会となるかどうかが懸念されている。
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