研究計画では、隔年でバンダアチェ市およびその近郊に建設された再定住地について隔年で、その定着状況を現地調査する予定であった。22年度は、まず、バンダアチェ市内に建設されたパンテリーク地区について、まず、【調査1】700戸余りの恒久住宅に住まう世帯に全数質問紙調査を行った。次いで、【調査2】パンテリーク地区での詳細な聞き取り調査と増改築状況の記録を行った。【調査1】では、(1)住所、(2)世帯主の名前、(3)従前の居住地の場所、(4)従前住居の所有状況(自宅か賃貸か)、(5)再定住地に転入する前の仮設居住地の場所、(6)再定住地に転入する際の応募方法、(7)現在の職業と就業場所までの交通手段について質問した。回収率は、東パンテリークで32%、西パンテリークで58%であった。【調査2】は、上記の質問紙調査の回収率が高かった西パンテリークで行った。その中でも特に【調査1】の結果から、再定住地にもかかわらず、被災前に自宅や土地を所有していた世帯が比較的集中している通りを対象とした。聞き取り項目は、家族構成、再定住地に転入した理由、家族成員ごとの恒久住宅の住まい方、増改築部分の有無とその理由である。その上で同時に各部屋の家具配置を含んだ恒久住宅平面図の記録を行った。聞き取り結果からは、市街地で現地再建の場合と異なり安定した核家族形態が多いことが分かった。また、被災前の自宅所有者の転入理由には、津波による土地の滅失したから、住宅供給が早かったから、従前の居住地で建築禁止令が出たから、など多様な回答があった。一方で、女系で住まいを相続するアチェでは、現地再建の住居を娘世帯が引き継いだ例があったのは特徴的であった。増改築は、主に狭い台所を増築した例が中心であった。増改築については、聞き取り以外に西パンテリーク全体について、目視により増改築部分とその機能を記録した。以上の調査は、現地のシャクワラ大と共同で行った。
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