H25年度は、研究最終年度であることを踏まえて、まず、まとめとなる査読論文の執筆・投稿を行った。査読論文では、バンダアチェ市内外の二つの再定住地入居者の入居までの履歴を明らかにし、その上で、主に立地の違いを視点に両再定住地の入居者の生活再建状態を比較しながら、特に郊外に高台移転し市街地から離れた再定住地の現在の問題を把握し、その入居者の今後の定住や転出の可能性を考える上での知見や判断材料を得ることを主な目的とした。以上を考えるにあたって、生活再建の内容を整理すること、生活再建項目の調査結果を見るにあたり調査地域特有の事情を踏まえた考察の枠組みを提示することも論文執筆の目的の一部とした。論文中で比較考察の対象としたのは、台湾の仏教系宗教財団である慈済基金会の援助で市内パンテリーPanteriek 地区の遊水池を開発した再定住地(以下、「パンテリー地区慈済再定住地」)と郊外の大アチェ県Kabupaten Aceh Besar の丘陵地ヌーフンNeuheun に建設された再定住地のうち中国慈善協会China charity Federation による再定住地(以下、「ヌーフン地区中国再定住地」)の二つである。 またすでに論文執筆のためのバンダアチェ市における調査はほぼ完了しており、論文査読者のコメントも特に追加で現地調査を行う必要があるものではなかった。このためH25年度の現地調査は、バンダアチェ市と同じスマトラ島で、西スマトラ地震による被害を受けたパダン市およびその郊外のパダンパリアマン郡の復興状況の視察を行い今後の研究展開の参考とした。
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