研究課題/領域番号 |
22404020
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研究機関 | サイバー大学 |
研究代表者 |
柏木 裕之 サイバー大学, 世界遺産学部, 教授 (60277762)
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キーワード | 古代エジプト / 岩窟遺構 / 掘削技術 / 古代建築 / ルクソール / 貴族の墓 / 列柱室 / 復元 |
研究概要 |
平成23年1月末に発生したエジプトのデモは、瞬く間に全土へ広がり、治安の悪化、混乱を引き起こした。その結果、平成23年度はカイロ近郊遺跡の発掘調査の許可が下りず、予定していたアブ・シール南丘陵の岩窟墓調査は延期となった。一方、既に出土した遺物の整理作業や保存修復、記録作業は可能となったため、ギザ遺跡のクフ王第2の船・船坑とルクソール王家の谷(西谷)アメンヘテプ3世王墓で記録調査を実施した。 クフ王の第2の船は岩盤を矩形に掘りくぼめ、その中に解体した木造船を安置した遺構で、木材や船坑を覆う蓋石が当初の状態のまま保持された貴重な資料である。平成23年度は約40枚の蓋石を取り上げ、記録作業を行うと共に、内部の木材の状態をチェックした。 蓋石は石灰岩の一枚岩で、表面にはガイドラインや王名、寸法などの書き付けも確認された。蓋石の設置工程の復元を試み、石材は東西に長い船坑に対し、西から東に向かって、西面を下にした状態で据えられたと考えられた。更に船坑内部の仕上げや痕跡から蓋石の設置作業と船坑の掘削作業は並行して進められた可能性が高いことが知られた。また比較の観点から隣接する第1の船の船坑を調査し、蓋石や船坑内部の記録を行った。この他、船坑内部に収められた木材の調査では三次元スキャナーを用いて詳細な現状記録を行った。 ルクソール西岸に位置するアメンヘテプ3世王墓は、壮麗な壁画や掘削の完成度という点で、王墓の到達点といってよい遺構である。平成23年度は同王墓を中心に、岩盤の掘削技術について記録、観察を行った。特に拡張が重ねられた二つの副室について改変の詳細を検討し、新しい解釈を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年1月に発生したデモによって治安が不安定となり、外国調査隊に対する発掘調査の許可が大きく制限されたため。
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今後の研究の推進方策 |
エジプト国内の政治情勢は依然不透明な部分が大きいが、治安は回復に向かっており、平成24年度はカイロ近郊の遺跡での調査が可能と考えられる。特に、アブ・シール南丘陵遺跡の岩窟墓について、一連の掘削工程を検討する計画である。 また同じ新王国時代の岩窟墓としてルクソール西岸の大型貴族墓の調査を行う計画である。100年ぶりに内部が再発見され、建築的な観点から詳細な報告を行う計画である。 ギザ遺跡のクフ王の第2の船プロジェクトでは比較研究として第1の船の未公開資料の整理分析に着手する計画である。
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