研究概要 |
本研究は、日本と近隣のアジア地域に自生し、19世紀以降欧米に人為的に導入され悪質な侵略的外来種として問題になっているイタドリ(Polygonum cuspidatum,英名 Japanese knotweed)、オオイタドリ(P. sachalinense, Giant knotweed)と両種の雑種(Bohemian knotweed)が、どのような過程を経て自生地域から、侵略地域へと蔓延し、侵略的外来種となったか、その、伝搬経路と侵略性獲得のメカニズムを明らかにすることを目的とした。日本各地、韓国、台湾の自生地域、英国、ヨーロッパ、北米東海岸、西海岸の侵入地域からこれらのサンプリングを行い、葉緑体DNAのrbcLーaccD領域、核DNA ITS領域のシークエンスを行い比較した.その結果、日本国内およびアジア自生地域のイタドリ類は核DNA ITS領域で6グループに葉緑体 DNAの rbcLーaccD 領域では5グループに分かれた。ヨーロッパと北米のイタドリは塩基配列が同一で、同じ起源であり、日本の日本海側に分布するグループに相関があることが明らかになった。また、オオイタドリについてもヨーロッパと北米産の個体の塩基配列は同じであり、日本のオオイタドリグループとの相関が見られた。自生地域から欧米へイタドリ類が導入されてから200年ほどしかたっておらず、ヨーロッパと北米に侵略的外来種として蔓延するイタドリは遺伝的な違いは認められなかった、現地在来種との遺伝的交流や、新たな地域への適応による遺伝的変化は検出されなかった。今後、RAD-Seq法など、より分解能の高い遺伝解析を試みるとともに、植物の生長に大きな影響を及ぼす共生微生物相の調査などを行い、侵略的外来種イタドリの侵略性獲得メカニズムを明らかにしていきたい。
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