研究課題
北方域の気候変動や森林施業による人為インパクトは、将来的な北方林の資源動態に大きな影響を及ぼしつつある。本研究では、北方域の針葉樹林帯における山火事撹乱の強度・頻度の変化が、木材資源動態に及ぼす影響を、実データに基づいた空間点過程モデルと個体ベースの森林動態シミュレータで分析しようとしている。本研究は、従来の地域限定型の資源保全研究とは一線を画し、環北方域の森林動態に共通した生態プロセスを解明する。今年度は研究初年であるため、フィンランドの共同研究者を相手国のマッチングファンドで招聘し、研究計画全体について会議を行い、調査計画と論文執筆計画を策定した。この会議では、山火事撹乱が変化した場合、北方林が低密度林やヒースに劣化するメカニズムを明らかにし、環境変動に適応し汎用性のある持続的森林施業のオプションを提示することを確認した。北方林の山火事撹乱は、その頻度と燃焼強度に負の相関がある。燃焼強度の高い山火事が稀に発生する場合、高密度の針葉樹林が更新し、次の山火事までに複数世代の樹木が共存する異齢林が発達する。山火事の頻度が高く燃焼強度も弱くなるに伴い、針葉樹の更新密度は低下し、同齢の低密度林からヒースへと衰退する。フィンランド北部の森林構造の空間変異や更新様式の差異は、このような山火事撹乱の頻度と強度の変異に対応していると考えられる。以上のプロセスを分析するため、本年度は、山火事撹乱跡地の森林再生過程を、空間点過程と角度統計を組み合わせたスキームで解析する手法を検討し、論文投稿の準備も行った。
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Journal of Vegetation Science
巻: 22 ページ: 334-345
Journal of Forest Research
巻: (印刷中) ページ: 1-5
巻: 17 ページ: 1-6
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