鱗翅目の食植性の起源を知るために重要な系統群であるコバネガ類について、幅広い食性調査と、系統解析を行なった。日本列島産のコバネガ科の大半はジャゴケ属3種を食草としており、その多様化には、寄主植物の転換ではなく、移動力の小ささと、繁殖干渉による生殖的隔離の成立が強く関与しているらしいことが明らかになった。コバネガ類の分子系統解析の結果、日本産の種群とゴンドワナ大陸の種群は系統が異なり、日本産の多くの種は、日本列島の中で種分化を遂げ、特に中新世以降に多様化したことが明らかになった。コバネガ科は南極大陸以外のすべての大陸に分布しており、ゴンドワナ大陸とローラシア大陸の分裂以前に食植性(コケ食)を獲得して、いまだにコケ食を続けている、非常に古い起源を持つ保守的な系統であることが明らかになった。 ゴンドワナ大陸の祖先的な食植性昆虫の探索の一歩として、今年度はオーストラリア東部の3カ所(ケアンズ周辺、シドニー周辺、タスマニア)の調査を行なった。ゴンドワナ大陸の代表的な植生の残る自然林において、祖先的な食植性昆虫の探索とそれらの食性調査を行なった。その結果、コバネガ科、シギアブ科の数種を採集し、またコケを食するガガンボ科とハモグリバエ科の幼虫を発見することができた。これらの標本をもとに、分子系統解析を進めている。
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