研究課題/領域番号 |
22405009
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 真 京都大学, その他の研究科, 教授 (80204494)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ゴンドワナ大陸 / チリ / ナンキョクブナ / モグリコバネガ |
研究概要 |
南米チリ・パタゴニア地方のコケ植物と原始的被子植物と、それらの植食者の探索を行なった。チリ森林公団(CONAF)からプジェウエ国立公園の調査許可を取得し、2012年11月4~16日の期間、加藤真・川北 篤・サトウアキラ・今田弓女の合計4名で調査を行なった。 プジェウエ国立公園には、ナンキョクブナの原生林が広がり、パタゴニアに固有の多様な植物の生育する湿潤な温帯林が広がっている。私たちが訪れたのは、落葉のナンキョクブナの新葉が展開をし始めた時期で、その新葉に、祖先的鱗翅目であるモグリコバネガの成虫と潜葉が見られた。ナンキョクブナに寄生しているミソデンドロン科の寄生植物が開花しており、その訪花昆虫の観察も行なった。その他、さまざまな植物の訪花昆虫相と潜葉虫相の調査を行なった。 コケを摂食する昆虫の探索を行なったところ、ツノゴケに潜葉するハモグリバエ類と苔類を摂食するシリブトガガンボ類が発見された。ツノゴケの潜葉虫はこれまで世界のどの地域からも発見されていない。コバネガ科とムカシガ科は今回は発見できなかった。スウィーピングによって、シギアブ科のSpaniopsis属と思われる成虫が採集された。採集されたこれらの昆虫は、分子系統解析にかける予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回のチリ・パタゴニアの調査によって、ナンキョクブナ林のコケ食者相の概略を明らかにすることはできた。ナンキョクブナの新葉に潜葉するモグリコバネガが採集されたこと、シリブトガガンボの幼虫が苔類を摂食していることが発見されたこと、ツノゴケの潜葉虫が発見されたことは大きな成果であった。しかし一方で、コバネガ科とムカシガ科が発見できなかったことで、目的の一部が達せられていない。時期をずらして、再度、チリ・パタゴニアの調査を行なう必要がある。しかし、これでオーストラリアと南米の代表的なコケ食昆虫が得られたので、それらの分子系統解析を進めることができる。 さまざまな植物の送粉者相と潜葉虫相の調査はある程度の成果を得たが、別の時期の調査が必要であることも明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
今回のチリ・パタゴニアの調査によって、温帯域のナンキョクブナ林のコケ食者相の概略を明らかにすることはできた。しかし、南米大陸には、アンデス山脈の雲霧林や、アマゾン低地の熱帯雨林、そしてギアナ高地の雲霧林といった、多様な森林生態系が存在する。ゴンドワナ大陸の植食者相の全貌をつかむためには、それらの森林生態系の探索を行なう必要がある。コバネガはエクアドルの山地林からの報告があり、アンデス山脈の雲霧林には、さまざまな祖先的食植性昆虫がいる可能性がある。 したがって2013年度は、さまざまな森林生態系を擁するペルーを調査対象にする予定である。私の研究室には現在ペルーからの留学生がおり、ペルーでの調査の下地も整いつつある。
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