研究概要 |
本研究では,4年間の研究期間の中で,周極(日本での高山)植物が地球規模で大きく南北に分布を拡げている地域3箇所:北米西部,極東ロシア,スカンジナビア~アルプスにおいて,(1)同一種が緯度に沿って光や温度環境などの環境傾度に適応する遺伝子をどのように分化させているか【環境への適応進化を地球規模で研究】,(2)第四紀気候変動(氷期間・氷期サイクル)によって,周極植物はどのような分布変遷を南北方向に遂げたか【地球規模での系統地理研究】,(3)周極地域全域の中で最も南に位置する日本列島の高山植物の起源を明らかにする:以上の3点を明らかにすることを目的に設定している。本年度は、ノルウエーにて野外調査を進めるとともに、共同研究者の一人でもあるオスロ大学教授のBrockmann氏の研究室を訪問して、共同研究体制に着いて詳細な検討を行った。Brockmann氏が保有している周極植物のうち、以下の植物のサンプル分譲を受けた:ミネズオウ、ウラシマツツジ、コケモモ(以上ツツジ科)、イワウメ(イワウメ科)。これらはいずれも、北極を取り巻くように30地点以上から採集したサンプルであり、採集地点の緯度傾度情報も完備していた。われわれは、これらのサンプルにさらに日本列島と極東ロシアのサンプルを加えて、系統地理研究と、phyE遺伝子を対象にした光受容色素タンパク質のエキソン部位の解析を、イニシアティブをとって解析することになった。さらに、ロシア科学アカデミーのウラジオストック土壌研究所と共同研究体制を構築して、日本人が立ち入りを禁止されている千島列島のサンプル、ならびにサハリンのサンプルを入手した。以上のサンプルは、既にDNA抽出を開始して、葉緑体DNAハプロタイプと、phyEなどの核遺伝子座の解析を始めた。
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