研究課題
本年度は、6月にアメリカ(ネブラスカ州リンカーン近郊)、8月にスイス(チューリッヒ近郊)、3月にオーストラリア(メルボルン近郊)に滞在し採集を行った。調査採集に際して、これまでとおり、採集地点の温度、pH、水質などについて、詳細に記録し、加えて、接合子を得るための土壌サンプル採集も行った。これらを日本に持ち帰り、光学顕微鏡での形態観察に基づき、種を同定した。また国内(三重、島根、北海道)からも採集を進めた。スイスおよびオーストラリアからは、それぞれ3株および5株のヒメミカヅキモ単離に成功したが、アメリカからはミカヅキモ属そのものを見いだせなかった。一方、国内からは8株の単離に成功した。得られた株について接合誘導実験を行い、ホモタリック、ヘテロタリック、単胞子形成のいずれの生殖様式であるかを評価したところ、ほとんどの株がホモタリックであると考えられた。また、それぞれの系統株について、18S rDNA group I intron配列およびITS2領域の配列を決定し、系統樹を作成した。その結果、形態による同定結果を支持し、得られた株のほとんど全てが既存のヒメミカヅキモクレードに含まれた。これまでに得たホモタリック株と、系統樹上で近縁なヘテロタリック株を用いて、両者間で有性生殖反応が起こるかを検討したところ、低い割合でハイブリッド接合子の形成が見られた。ヘテロタリック株間の生殖隔離とは異なるものの、全く異なる交配様式への進化は、比較的簡単に起こり得たことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
ヒメミカヅキモ株について、アメリカでの調査では取得に成功しなかったものの、その他の拠点では概ね予定通りに調査が進み、株取得に成功した。また、取得株を用いた系統解析、交配試験なども概ね順調に進んでおり、ホモタリック株とヘテロタリック株の間でハイブリッド接合子が形成されるという新発見にもつながったため、おおむね順調に進展していると自己点検・評価した。
今後も、予定通り、現地調査、採集、無菌系統株確立、系統解析などを進める。また、ヘテロタリック株間の生殖隔離のみならず、ヘテロタリズム、ホモタリズムといった生殖様式そのものの進化が種分化にどのように関係しうるのかについても、生理学的実験などを通して検証する予定である。
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