研究課題/領域番号 |
22405015
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山岸 順子 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (60191219)
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研究分担者 |
森塚 直樹 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10554975)
田島 亮介 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60530144)
本間 香貴 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (60397560)
加藤 洋一郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (50463881)
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キーワード | 国際情報交換 / 東北タイ / 環境調和型農林水産 / 水資源 / 作物学 / 土壌学 |
研究概要 |
タイ東北部天水田は、降雨パターンが不安定であること、また砂質土壌であることから、頻繁に圃場から田面水が消失する。これまで、田面水の消失による好気土壌条件の出現と干ばつの 影響を切り離して検討した研究事例は無く、当該地域においてイネ収量が低い原因は低肥沃な土壌と干ばつ遭遇に伴う脱水ストレスにあると考えられてきた。本研究では、干ばつによる脱水ストレスが植物に生じなくても、天水田における慢性的な落水状態はイネの養分吸収と収量を抑制するという仮説を検証することを目的とした。東北タイのウボン稲研究所において2つの異なる水管理の圃場(常時湛水、非湛水)を用意し、対象品種を含む20-30系統を供試して地上部・地下部の生育および収量を比較した。非湛水圃場では、明渠排水によって落水状態を保つとともに、補助灌漑によって土壌水分を圃場容水量付近(-30kPa以上)に維持した。その結果、非湛水圃場では、 作土層の土壌硬度は土壌水分と密接な関係にあり、掛け流し灌漑直後に土壌は軟らかくなるが、数日以内に再び急激に硬くなった。また、下層土の根の生長は田面水の消失に伴い促進されるが、降雨の間隔が長くなると土壌硬度が上昇するために逆に抑制されることが示唆された。一方で作土層の側根発達は非湛水処理によって有意に抑制された。これらの根生長特性には遺伝的変異が存在することも確認された。非湛水圃場の収量は、湛水圃場に比べて2010年、2011年ともに低下した(34%-61%の減収)。収穫指数の低下は小さく、収量抑制 の要因は乾物生産の低下にあった。特に植物体リン濃度が非湛水圃場では両年とも平均0.14%と低く、リン吸収の低下が乾物生産抑制の大きな要因であることが明らかとなった。東北タイ天水田に適したイネの品種改良のためには落水条件下の養分吸収、とくにリン吸収能力の改善が重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自然災害により繰り越しを行って研究を継続したが、前年度分の研究はほぼ予定通り達成することができた。 特に、リン吸収の低下が乾物生産抑制の大きな要因であることを明らかにすることがで、東北タイ天水田に適したイネの品種改良のためには落水条件下の養分吸収、とくにリン吸収能力の改善の重要性が示唆されたことは大きい。
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今後の研究の推進方策 |
前年度分の研究はほぼ達成することができたことから、当初予定の研究を継続をしていく。
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