研究課題
これまで研究代表者らが研究を実施してきたICRISATニアメ支所の試験圃場において、圃場試験を実施している。この圃場試験は、これまでの研究により風食抑制とトウジンビエの収量増に効果があることが実証されている「耕地内休閑システム」をさらに持続性の面で改良することを目的としている。このシステムでは、耕地内に5m幅の休閑植生帯を適当な間隔で設け、風により運ばれる肥沃な表層土壌を捕捉する。翌年この休閑帯を風上に移動させ、前年休閑帯であった場所を耕作する。改良点は、休閑植生帯の管理法と前年休閑帯であった場所での耕作法の2点である。まず前者について休閑植生の代わりにマメ科作物の播種あるいはリン鉱石施用の有無という2処理を組み合わせた試験を行い、これら処理の効果を今年度のトウジンビエ作によって検証した。その結果、これらの処理による有意な正の効果は認められなかった。後者については、植生帯であった場所での施肥の効果を検証するため、植生帯作成後の栽培年数が異なる場所(1年~3年)の3処理と対照区として連続耕作区の計4処理区において、トウジンビエを施肥あるいは無施肥で栽培した。その結果、休閑植生帯の増収効果は3年間持続していたこと、施肥による増収効果は有意であった。しかし、施肥区においてトウジンビエ地上部に吸収された窒素量は、施肥によって投入された窒素量を超えていた。したがって地上部すべてを圃場外へ持ち出す現行の農業システムでは、施肥によって持ち出される養分が増え、持続性が逆に危ぶまれることがわかった。ミニライゾトロンによる根系調査を実施した。ミニライゾトロンとは、あらかじめ土壌に挿入しておいたアクリルチューブ内に、グラスファイバーの先に取り付けたCCDカメラを導入し、チューブ周辺に存在する根の様子を非破壊的に観察・定量する方法である。その結果、空間的な根の分布を経時的に追跡することができた。
2: おおむね順調に進展している
耕地内休閑システムの改良点が明らかになり、養分収支の観点からみた本システムの持続性も評価でき、おおむね当初の計画通りである。
施肥によっても本システムの持続性が危ぶまれる結果となったことから、休閑中に窒素を付与する新たな方法として空中窒素固定能の高い自生植物の導入を計画している。
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