研究概要 |
地球温暖化緩和に果たす森林のCO2吸収能(炭素固定能)の把握および森林減少・劣化の回避は、熱帯では緊急の課題である。熱帯モンスーン地帯で拡大していた荒廃草地から森林再生化に伴う年間炭素固定能および天然更新における人工林触媒効果の解明を目的に、タイ王室林野局、タイ土地開発局、カセサート大学との共同研究を行っている。研究サイトは、11月~翌年4月まで乾季を持つタイ東北部ナコンラチャシマ県サケラート試験地とし、草地2種(Imperata cylindrical(Yk)、Saccharum spontaneum(Yp))、早生樹3種(Acacia mangium(Am),Acacia auriculiformis(Aa),Eucalyptus camaldulensis(Ec))、郷土樹種1種(Dalbergia cochinchinensis(DcII)),天然林(乾燥常緑林)を対象とした。昨年度同様土壌断面調査、地上部現存量調査、土壌水分、気温・湿度、リターフォール量調査、炭素窒素および同位体比分析等を行った。 主要な成果は以下の通りである。表層土壌(0-5cm)の炭素含有率は1~3%の範囲で、天然林に比べて人工林で依然低い。これは、人工林の土壌はまだ十分天然林まで回復していない事を示唆していた。成長量に大きな影響を及ぼす土壌含水率は、Ec林で低い表層土壌含水率(14.4~23.1%)を示し、活発な蒸発散が行われている事を示唆していた。草地(Yp)(29.1~36,6%)、草地(Yk)(29.4~35.2%)、DcII(30.6~33.2)では高い土壌含水率を示し、その他林分はこの中間にあった。また早生樹人工林の土壌の炭素同位体比は、12年前に比べて天然林の値に近い値を示した。これは草地由来の炭素源が急激に減少していることを示している。なお、地上部現存量は解析中である。
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