研究課題/領域番号 |
22405026
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
酒井 正治 独立行政法人森林総合研究所, 立地環境研究領域, 主任研究員 (00353699)
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研究分担者 |
岡田 直紀 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (40335302)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 熱帯季節林 / 森林再生化 / 森林現存量 / 同位体比 / タイ国 |
研究概要 |
熱帯季節林地帯における荒廃草地の造林に伴うバイオマス変化の解明を目的に、カセサート大学、タイ王室林野局と土地開発局との共同研究を行っている。タイ国の東北部ナコンラチャシマ県サケラート試験地を研究サイトとした。12年前にバイオマス調査を行った人工林4プロット(早生樹種3、郷土樹種1)を含め9プロット(24年生人工林4、天然林3、草地2)を設定し、地上部現存量、土壌水分、気温・湿度、リターフォール量調査等を行った。各プロットで土壌断面調査および一定深さ毎に1mまでの土壌採取を行った。さらに、炭素同位体比測定用の葉の採取を行った。炭素同位体比分析(δ13C)から、以下のことが認められた。天然林土壌のδ13C値は深くなるにつれ、-27.5‰から-24.0‰へ増加傾向、一方、草地(Yp)は反対に-18.7‰から-23.5‰へ減少する傾向が認められた。なお、深さ約70cm~100cmの土壌層位では、天然林と草地の差が小さくなり、-24‰前後に収束する傾向が認められた。Acacia auriculiformis(Aa)人工林のδ13C値は、草地のそれに比べて、徐々に減少する傾向が認められ、表層土壌(0-5cm)の場合、植栽後13年で、天然林と草地の中間のδ13C値(-23.4‰)、植栽後24年でほぼ天然林のδ13C値(-27.2‰)を示した。このことは、草地にAaを植栽した場合、植栽後約24年で草地由来の表層土壌有機物は全て分解され、草本由来の有機物からAaのリターフォールと根のリターフォール由来の有機物に全てかわったことを示唆していた。土壌5cm-30/40cmの層位についても、表層同様、δ13C値は減少傾向であった。天然林のδ13C値は葉、細根、土壌の順に増加傾向、一方草地では、減少傾向が認められた。これはそれぞれの基質の違いに基づく有機物分解プロセスが異なることを示唆していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タイ国機関との共同研究のため、研究担当者とは研究目標の確認、それを達成するための運営について、十分な協議を重ねている。さらに、開催したセミナーを通して、研究成果の解析を行う等、共同研究者と意思疎通をはかっているため、試験地の維持、モニタリングデータ観測、バイオマス調査、各種化学分析等を計画通りに行っている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であるため、これまでの観測・測定データを解析し、不足データの収集を行い、それらのデータからえられた成果を公表するとともに、タイ国で公開セミナーを開催し、成果の普及に努める。
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