熱帯季節林地帯における荒廃草地の造林に伴う森林内の炭素プールの変化を解明するため、タイ国のカセサート大学、王室林野局、土地開発局と共同研究を行った。タイ国の東北部ナコンラチャシマ県サケラート試験地を研究サイト(バンコクから330km)とした。12年前に調査を行った同一人工林4プロット(早生樹種3、郷土樹種1)において、土壌調査、林分調査を行った。土壌断面調査を各プロット3カ所で行うとともに、土壌容積重、炭素量、炭素同位体比分析および細根量測定のため、一定深さ毎に1mまでの土壌採取を行った。なお、12年前の同試験林での結果と合わせ報告する。 12、24年生における地上部と地下部(根)の合計年間炭素増加量(tC/ha/年間)は、早生樹林(アカシア、ユーカリ)でそれぞれ、6-10、5~7と推定された。一方、12、24年生林分とも土壌現存量は70tC/ha前後で、草地と比べて約30tC/ha減少していた。従って、草地造林に伴う林全体の年間炭素固定量は、植栽後24年生林分では、3-5tC/ha/yrと計算された。なお、人工林の土壌炭素蓄積量は原植生である天然林に比べて約2割少なく、まだ回復していなかった。また、この地域の土壌肥沃土指数(土地開発局基準)が低いことから、この地域では森林の保全が重要である。また、安定炭素同位体比値から土壌有機物の起源解析を行った結果、植栽24年後には表層(0-5cm)土壌では草地由来の有機物が全て早生樹由来の有機物に変わっており、草地由来の表層土壌有機物の分解速度は約70g/m2/yr、樹木由来の表層土壌有機物の堆積速度は約30g/m2/yrと推定された。
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