研究課題/領域番号 |
22405030
|
研究機関 | 独立行政法人国際農林水産業研究センター |
研究代表者 |
田中 勝久 独立行政法人国際農林水産業研究センター, 水産領域, 主任研究員 (40371835)
|
研究分担者 |
森岡 伸介 独立行政法人国際農林水産業研究センター, 水産領域, 主任研究員 (40455259)
花村 幸生 水産総合研究センター, 中央水産研究所, 図書資料館長 (50371951)
豊原 治彦 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90183079)
|
キーワード | 水産学 / 海洋生態 / 物質循環 |
研究概要 |
マタン・マングローブ域における調査において胃内容物中にマングローブ落葉の存在が顕著に認められた魚類のクロホシマンジュウダイ及び水産有用魚類の餌生物である動物プランクトン(主にコペポーダ類)を対象にカルボキシメチルセルロースを含んだアガロースプレートによるプレートアッセイ法により分解酵素活性の有無を検証した。その結果、コペポーダ類(混合種)がセルロース分解酵素を有することが初めて示された。また、クロホシマンジュウダイについてはセルロース分解活性が検出されず、陸起源由来有機物を直接同化していないことが明らかになった。また、マタン・マングローブ域底泥に生息するメイオベントス(介形虫類、ハルパクチクス類、線虫類)についてザイモグラフィー法によりセルラーゼタンパクの分子量を測定した結果、介形虫類から35kDa、ハルパクチクス類から60kDaの分子量バンドが検出され、これらのメイオベントスのセルロース分解能が示された。一方、マングローブの分布範囲がマタン水域に比較して著しく狭いセランゴール沿岸海域に生息するハイガイ(Anadara granosa)においてもセルロース分解能が生化学的に示され、マタン・セランゴール両水域のハイガイが陸起源有機物を同化している可能性が示唆された。このように、昨年度までの調査結果と合わせて有用魚類の餌料生物の大部分が落葉有機物のセルロース分解能を持つことが明らかとなった。また、マングローブ域に生息する魚類優占種(フエダイ類、コニベ類、クロホシマンジュウダイ)では、マングローブ域特有の幼稚魚の分布回遊様式の存在が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マタン・マングローブ域における餌料生物のセルロース分解酵素活性、魚類の餌料生態についての調査は順調に経過し、成果を公表しつつある。また、フエダイ幼稚魚のマングローブ域における餌料生態やコペポーダ類(混合種)がセルロース分解酵素を持つことなど新知見が得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は餌料生物によるマングローブリター(落葉有機物)の利用過程に関する調査をマタン・マングローブ域において継続するとともに、マングローブの分布範囲がマタン水域に比較して著しく狭いセランゴール海域の餌料生物について同様の調査を実施し、マタン・マングローブ域との比較を行う。中でも、昨年度までの調査の結果、セルラーゼ活性が初めて確認された動物プランクトンについて、主要種の種ごとのセルラーゼ活性測定並びに安定同位体比分析を実施し、両海域の比較を行う。また、マングローブ奥部の魚類優占種(フエダイ類、コニベ類、クロホシマンジュウダイ)では、マングローブ域特有の幼・稚魚の分布回遊様式の存在が示唆されたことから、魚類とマングローブ環境との関連についての解析をクロホシマンジュウダイ・フエダイ類を中心にマタン・マングローブ域において継続する。魚類については耳石日輪解析によりマングローブ域における初期生態情報を得る。また、昨年度までの調査で得られた植物プランクトン、底泥、底生藻類等の基礎生産者の安定同位体比試料の分析を継続し、基礎生産者の安定同位体比の詳細な特徴を明らかにする。
|