研究課題/領域番号 |
22405030
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 独立行政法人国際農林水産業研究センター |
研究代表者 |
田中 勝久 独立行政法人国際農林水産業研究センター, その他部局等, その他 (40371835)
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研究分担者 |
森岡 伸介 独立行政法人国際農林水産業研究センター, その他部局等, 研究員 (40455259)
花村 幸生 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, その他 (50371951)
豊原 治彦 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90183079)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 海洋生態 / 水産学 / マングローブ / 餌料生物 |
研究概要 |
マングローブ域において懸濁物質の有機態炭素/クロロフィルa比(POC/Chl.a)を基に植物プランクトンの有機炭素・窒素安定同位体比(δ13C, δ15N)の変動を調査した。さらに同海域において採集した干潟底生藻類・マングローブ・ハイガイ・エビ・アミ類のδ13C, δ15Nを分析した。植物プランクトンが主成分であると考えられる懸濁物質(POC/Chl.a < 80) のδ13Cは塩分低下に伴い減少し、マングローブのδ13Cに近づいた。しかし、植物プランクトンのδ15Nはδ13Cの低下にともなって増加する傾向が認められるのに対し、ハイガイ・エビ類・アミ類のδ15Nはすべて河口部を境にマングローブ域奥部へ向かうにつれて減少する傾向を示した。従って、奥部ではδ15Nの低いマングローブ起源有機物も炭素源として利用されていることが示唆された。マングローブ域表層水中のChl. a濃度の変動は大きく、特に奥部では長期間1 μg/l以下の低濃度が続く場合が観測された。以上の結果からマタン・マングローブ域奥部では、少なくとも植物プランクトン欠乏時の補助的餌料としてマングローブ起源有機物が重要な役割を果たしているものと推察された。一方、ハイガイ、アミ6種、エビ7種、動物プランクトン2種について、中腸腺、腸、あるいは全個体抽出液を用いて、アガロースプレート法、SDS-PAGEザイモグラフィ―法及び生成還元糖の定量によりセルラーゼ活性を測定した結果、いずれの生物もセルラーゼ活性を示した。これらの結果から、マングローブ域内に生息する水生生物の大部分はセルラーゼによりマングローブ由来のセルロースを分解利用し得ることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マタン・マングローブ域およびセランゴール周辺海域における餌料生物のセルロース分解酵素活性についての調査はほぼ終了し、コペポーダ類がセルロース分解酵素を持つことなど新知見が得られている。また、マングローブ域奥部における安定同位体を用いた研究もクロホシマンジュウダイ関連を除きほぼ終了した。これらの研究成果については順調に成果を公表しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
マングローブ域の魚類が、その生活史の中でどのようにマングローブ域を利用しているのかについて、マタン・マングローブ域における優先種のフエダイの一種およびコニベ類の1種について昨年度までに調査研究を実施し成果を取りまとめたが、マングローブ域における優占種のクロホシマンジュウダイに関する調査研究を、トロール採集、耳石日輪解析および安定同位体比測定を用いて継続する。
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