研究課題/領域番号 |
22405033
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山路 永司 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (10143405)
|
研究分担者 |
吉野 邦彦 筑波大学, システム情報工学研究科, 教授 (60182804)
嶋 栄吉 北里大学, 獣医学部, 教授 (40196457)
石川 雅也 山形大学, 農学部, 准教授 (30313068)
石井 敦 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (90222926)
藤崎 浩幸 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (30209035)
|
キーワード | 灌漑開発 / 農村開発 / 持続性 / 嘉南用水 / ブランタス用水 |
研究概要 |
大規模灌概事業は灌漑開発による食糧増産・農村開発という役割を持つが、灌漑開発は地域開発に繋がり、当該地域の社会経済条件の発展に大きく寄与することが期待される。 研究の2年目となる23年度には、1970年代に開発されたブランタス用水(インドネシア)での合同調査と、1930年代に開発された嘉南用水(台湾)での個別調査を行った。 ブランタス川流域では、平地におけるブランタスプロジェクトの現時点での成果と傾斜地における土地利用管理とを調査した。 平地では、ブランタス川流域広域事務所、公共事業省東ジャワ州灌漑局でヒアリングを行い、管理担当区分の考え方と区分別灌漑面積データを入手した。より詳細かつ具体的な水管理の方法について、クディリ地方灌漑・鉱業・エネルギー担当事務所を訪問し、水管理サブリーダー(8人)に聞き取りを行った。その結果、ブランタス事業以前にも小規模な灌漑組織が存在していたこと、ブランタス事業では既往組織を活かしながら効率的な事業を行ったことを確認した。ブランタス事業に含まれなかった小規模な灌漑事業地区では、施設および管理に課題が存在することを確認した。 流域の傾斜地では、森林保全地域および伐採した開発地(リンゴ、サトウキビ、トウモロコシ)を調査した。果樹園では、縦畝方式およびマルチングが農地保全に有効であることを確認した。一方、普通畑では保全方式が不十分で、巨大なガリ侵食が観察された。 嘉南用水地区では、水利開発を活かす圃場整備方式および水管理方式についてヒアリングを行った。圃場整備の区画割り方式については、傾斜方向と長辺方向について、わが国とは異なる方式が採用されており、その得失について考察した。烏山頭ダムにおけるレクレーション等の多目的利用、最下流部における渡り鳥との調和、稲作の後退と作物の多様化といった課題についても考察を継続している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ブランタス川流域では、従前の小規模灌漑を取り込みながら大規模な灌漑開発を行ってきたという新たな知見を得ることができた。そうした歴史的経緯もあり、灌漑施設の管理主体は、ブランタス川流域広域事務所、公共事業省東ジャワ州灌漑局、その地方事務所と所轄が輻輳しており、整理すべき課題も明らかとなったが、具体的な改善方向が見えるには到っていない。流域全体の水質や滞砂に影響を与える傾斜地での農地保全については、その意義と方式が農民に十分に理解されていないように思われた。この実証が新たな課題として出てきた。 嘉南用水地区では、開発以降の年月が長いこともあり、歴史的経緯の把握が未だ不十分な状況にある。 以上を勘案して、(3)やや遅れていると自己評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
本科研の最終年度である平成24年度には、両地区の調査を分担して行い、遅れを取り戻し、当初計画を遂行したい。加えて、これまでの調査を総括し今後の展望を明確にするため、7月に山形大学でミニシンポジウムを、9月に東京大学で総括シンポジウムを開催する。総括シンポジウムには、可能であれば、インドネシアおよび台湾の研究者を招聘したい。
|