研究概要 |
アフリカ大陸、アジア、南米などに生息する在来種家畜や野生動物は、種々の疾病に対して抵抗性を示す。本研究により、外来種家畜が致死的であるダニ媒介性原虫やウイルスに感染しても在来種家畜や野生動物はサイトカインストームを起こさず無症状であることが明らかとなった。しかし、このような疾患感受性の違いを示す詳細な機構は未だ解明されていない。今年度は、サハラ砂漠以南に広く分布し、各種感染症に対して非常に強い抵抗性を示すアフリカスイギュウ(Syncerus caffer)の免疫学的調査を開始した。アフリカスイギュウの免疫学的解析は行われていないことから、まずサイトカイン遺伝子などの塩基配列を同定し、他種哺乳類のものとの系統学的比較解析を行った。ケニア共和国ナイロビ国立公園内にてアフリカスイギュウより血液を採取した。白血球分画を調製後、RNAを抽出しcDNAを合成した。既知ウシサイトカイン遺伝子より各種プライマーを設計し、調製したcDNAを鋳型としてPCRを行った。各PCR産物を精製後、各サイトカイン遺伝子のORF全長をクローニングし塩基配列を決定し、他のウシ科動物を中心に系統学的比較解析を行った。今回得られたアフリカスイギュウのIL-1α,IL-1β,IL-2,IL-4,IL-6,IL-10,IFN-γおよびTNF-α遺伝子の予想アミノ酸配列のウシ(Bos taurus)との相同性はそれぞれ、99.4%,99.1%,99.4%,98.5%,99.5%,98.5%,98.1%,100%であった。今後、得られた配列を基にサイトカイン定量法の開発、組換え体や抗体の作製を行い、疾患感受性の解析や各種病原体への免疫応答などについて感受性動物との比較免疫学的解析を行う予定である。
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