研究課題
アフリカ、アジアおよび南米などに生息する在来種家畜や野生動物は、種々の疾病に対して抵抗性を示す。しかし、このような疾患感受性の違いを示す詳細な機構は未だ解明されていない。Theileria parva (T.parva)原虫によるウシの東海岸熱の致死率は70~100%にも至る。我々は、外来種ウシ(Bos taurus)が、T.parvaに感染すると炎症性サイトカインストームが引きここされ数日で死に至ること、アフリカ在来種(Bos indicus)は、T.parvaに感染しても無症状であることを報告した。これらの在来種が分布するアフリカサハラ砂漠以南ではアフリカスイギュウ(Syncerus caffer)が、T.parva感染に対しさらに強い抵抗性を示すことが知られているが不明な点が多い。そこでケニア共和国ナイロビ国立公園内にてアフリカスイギュウより採材を行い、比較免疫学的解析を行った。各サイトカインの遺伝子塩基配列を決定しReal-time PCR法による定量解析法を構築後、発現解析(IL-1β,IL-2,IL-4,IL-6,IL-10,IL-12p40,IFN-γ,TGF-β1,TGF-β2およびTNF-α)を行った。血液塗抹中の原虫の有無ならびにReal-time PCR法を用いたp104遺伝子の定量的検出により、7頭中3頭においてT.parvaの感染が確認された。しかし、ウシでの感染致死量以上の原虫数が認められたが、臨床症状は全く呈しておらず、感染および非感染両群間におけるサイトカインの発現にも顕著な差は認められなかった。今回の結果より、アフリカスイギュウはT.parvaに感染後、原虫血症を呈するにもかかわらず、感染ウシで認められた炎症性サイトカインストームを起こさないことが明らかとなった。今後、このような疾患感受性の違いを示す詳細な機構について解明したい。
1: 当初の計画以上に進展している
T.parva原虫感染症をモデルに比較疾病感受性解析を行なった結果、疾患感受性が異なる動物間の感受性の差は感染に対する抵抗性の差ではなく、病原体に対する免疫応答の差であることが明らかとなった。今後、このような疾患感受性の違いを示す詳細な機構について解明したい。
現在、T.parva原虫感染症モデルに加えトリパノソーマ原虫感染モデルにおいても比較解析を行なっている。トリパノソーマ原虫はマウスへの感染性があることから、異なる疾患感受性の機序について詳細な解析が可能である。今後、タンパクレベルでの比較免疫学的解析を行ない機序について明らかにしていきたい。また、トリパノソーマ病の自然宿主であるウシを用いた感染実験には、農林水産省からの学術研究機関指定が必要なことから、申請し承認を得た。今後はウシを用いた病態解析も行なう予定である。
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