研究概要 |
平成24年度の繰越分として平成24年5月にバングラデシュのMymensingh地域においてイヌバベシアの調査を行った。野犬50頭から末梢血をFTA eluteカードに採取し、抽出したDNAについてバベシア原虫の18S rRNA遺伝子のnested PCR検出を行ったところ、陽性率は30%であった。これらのPCR産物をRFLP 解析と塩基配列解析を行った結果、原虫種はすべでBabesia gibsoniであることが判明した。さらに、BgTRAP遺伝子を増幅してPCR産物の塩基配列を解析したところ、C末端近くにあるアミノ酸残基の繰り返し領域に多型が認められた。BgTRAP遺伝子の塩基配列の系統樹解析により、バングラデシュのB. gibsoni株は他の東アジア株とは異なるクラスターを形成することが判明した。イヌのBabesia gibsoniは、アジアではこれまで日本、韓国、台湾、マレーシアに分布することが知られているが、本研究により、バングラデシュのイヌにB. gibsoniが感染していることが初めて明らかになった。 一方、住血微生物のベクターとして重要なアブの調査では、タイ国チェンマイ付近においてはTabanus属 が3種類(T. eurytopus, T. rubidus, T. striatus)、Chrysops 属が2種類(Chrysops disper, C. fasciatus)が分布することが確認された。また、ミャンマーにおけるこれまでの調査では、Tabanus 属が4種類(Tabanus brunnipenis, T. fontinalis, T. rubidus, T. striatus)、Chrysops 属が2種類(Chrysops disper, C. fasciatus)が分布することそれぞれ確認された。
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