研究課題
2011年5月9日~15日までの7日間、フィリピン大学ロスバニョス校(UPLB)付近でコウモリの捕獲調査を実施するとともに、フィリピン南東部のミンダナオ島近くのサマール島で、世界最多のコウモリが生息する洞窟(モンフォールコウモリ洞窟)を見学した。今回の調査には日本側7名及びフィリピン側4名が参加し、約50頭のコウモリを捕獲することができた。今回のサンプル及び過去のサンプルを用いて、以下の成果を得た。1.レストンエボラウイルス(REVOV)に関する研究これまで採材した141頭の血清を用いて、REVOV核蛋白及び膜糖蛋白に対する抗体の有無を調査した。その結果、ジュフロワルーセットオオコウモリ16頭中、5頭で核蛋白に対するIgG ELISA抗体陽性、5頭で膜糖蛋白に対するIgG ELISA抗体陽性であった。そのうち3頭は両方のウイルス蛋白に対する抗体を有していた。さらに、REBOV核蛋白及び膜糖蛋白を発現するHELA細胞を用いて蛍光抗体法で検討したところ、1頭の血清は蛍光抗体法でも陽性であった。これらの結果より、フィリピンのルソン島に生息するルーセットオオコウモリを自然宿主とするREVOVの感染環がある可能性が示唆された。なお、コウモリの脾臓サンプルからウイルスゲノムの検出を試みたが、検出されなかった。2.コウモリコロナウイルス(BtCoV)に関する研究フィリピンにおけるBtCoVの分布と進化を明らかとするため、コウモリ腸内容物をサンプルとしBtCoV遺伝子検出を試み、複数のサンプルから陽性反応を得た。今後のサンプル数を増やし、結果を整理していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
これまでのところはおおむね順調の進展している。ジュフロワルーセットオオコウモリがレストンエボラウイルスに対する抗体を持っていることを発見するなど、それなりの成果は上がっていると判断する。平成23年度は学生および大学院生の就職活動の時期に当たり、当初捕獲調査への参加を予定していた者で、実際には参加できなかった者がいた。そのため、当初の予定より旅費が余り、その分を平成24年度に繰り越した。
1.レストンエボラウイルスに関する研究についてルソン島のジュフロワルーセットオオコウモリからレストンエボラウイルス抗体を検出したが、まだ陽性検体数が少ないので、検体数を増やす必要がある。また、ルソン島だけでなく、ミンダナオ島などの他の島のルーセットオオコウモリにも陽性例があるのか興味のあるところである。2.コウモリコロナウイルスに関する研究についてコウモリコロナウイルスに関する調査も検査数を増やし、フィリピンにおけるコウモリコロナウイルスの感染状況を明らかにする予定である。
すべて 2013 2012 2011
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (8件) 図書 (2件)
Arch Virol
巻: 158 ページ: 1003-1011
10.1007/s00705-012-1577-3
BMC Vet Res
ページ: 8:189
doi:10.1186/1746-6148-8-189
Virus Genes.
巻: Feb;44(1):40-4
doi:10.1007/s11262-011-0661-1.
巻: 157 ページ: 2349-55
10.1007/s00705-012-1410-z
Emerg. Inf. Dis.
巻: 18 ページ: 536-537
10.3201/eid1803.111121
Emerg Infect Dis
巻: 17 ページ: 1559-1560
10.3201/eid1708.101693