研究課題
ウシMHC(BoLA)は、第23番染色体上に位置していて、ヒト同様に高い多型性を示す遺伝子群である。BoLAクラスII領域の中で最も多型に富むDR分子はヨーロッパの品種やホルスタイン種などを用いた研究によって、現在までに119のアリルが同定されている。しかし、東南アジア諸国における研究は進んでいない。そこで、本研究はフィリピン6島(Luzou島、Bohol島、Cebu島、Iloilo島、Pauglao島、leyte島)に生息している牛固有品種を用いて、DRB3遺伝子頻度を解析し、日本及びアメリカ大陸のウシ材料を用いて開発されたPCR-SBT法を東南アジアのウシにも適応できるように改良した。さらに、他品種との比較を行い、その特徴を明らかにした。フィリピンの固有品種(144頭)、Sahiwal種とHolstein種の交雑種(256頭)、固有品種とBrahman種の交雑種(91頭)、固有品種とホルスタイン種とSahiwal種の交雑種(2頭)、Brahman種(6頭)、固有品種とホルスタイン種の交雑種(5頭)、ホルスタイン種(3頭)、固有品種とジャージー種の交雑種(1頭)、固有品種とホルスタイン種とBrahman種の交雑種(1頭)、Isian Victoria種(1頭)、計10品種566頭の血液サンプルよりDNAを精製し、BoLA-DRB3アリルのタイピングを行った。さらに本年度末2月には499頭のサンプリングを実施した。その結果、82種類の既知アリルと9種類の新規アリルが同定され、高い多型性が確認できた。既知アリルについて、フィリピン固有品種と交雑種及び日本固有種とのアリル頻度を比較したところ、それぞれの品種ごとに特徴的なアリルが見つかった。加えて、フィリピン固有種と日本固有種とのDRB3アリルの比較を行ったところ、両品種間で明らかな違いが見られた。また、品種間における遺伝的距離を測定した結果、フィリピン固有種と日本固有種は明確に2つのグループに分離していた。現在、我々が日本の牛を用いて同定し牛白血病の発症に対して抵抗性・感受性を規定するBoLA-DRB3対立遺伝子のフィリピンにおける分布状況を解析中である。
2: おおむね順調に進展している
フィリピンは7000の島からなり、特有の牛固有品種が維持されている島もある。従って、フィリピンで採血した約1000頭の牛のタイピングによって、南米5力国で実施した3000頭の採血で得られたより多くの既知アリルと新規アリルを同定することに成功した。それらの新規アリルを同定する過程でタイピング法の改良にも成功した。
この2年間で改良した方法を用いて、来年度はさらに多数の東南アジア諸国での牛サンプルの収集を進め、タイピングを推進して行く予定である。最終的には、牛白血病の発症に対して抵抗性・感受性を規定するBoLA-DRB3対立遺伝子の東南アジアにおける分布を明らかにする。
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Molecular Biology Reports
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