研究課題/領域番号 |
22406004
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
熊谷 嘉人 筑波大学, 医学医療系, 教授 (00250100)
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研究分担者 |
新開 泰弘 筑波大学, 医学医療系, 助教 (10454240)
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キーワード | 大気中揮発物質 / 親電子物質 / 化学修飾 / Nrf2/Keap1システム |
研究概要 |
我々は先行研究により、アメリカ南カルフォルニアで採取した大気中揮発性成分中に親電子物質が存在することを明らかにした。一方、生体はそのような反応性の高い化学物質から身を守る感知・応答の適応システムを有していることが知られている。そこで本年度は、大気中揮発性成分中の生体影響および細胞応答能を評価するため、当該揮発性成分に曝露した細胞の遺伝子発現変化の網羅的な解析を行うことを目的とした。 大気中揮発性成分は南カルフォルニア大学付近にてハイボリュームエアサンプラーを用いて、XAD-2樹脂で採取したものを使用した。当該揮発性成分をヒト気管支上皮由来BEAS-2B細胞に6時間曝露後、mRNAを抽出してマイクロアレイで分析した結果、発現が2倍以上増加した遺伝子群および1/2以下に減少した遺伝子群をそれぞれ81個および42個検出した。その中でも発現が増加した遺伝子群に着目し、5倍以上に発現が増加した遺伝子群を機能別にグループ分けしたところ、ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)、シスチン/グルタミン酸トランスポーター(xCT)、グルタミルシステインリガーゼ(GCL)およびアルドケト還元酵素1B10(AKR1B10)などの解毒代謝に関わる酵素群の割合が最も多かった。一方、気管支炎や喘息の罹患には大気汚染物質による炎症性サイトカインの発現上昇が関与することが示唆されているが、大気中揮発性成分は炎症性遺伝子群の発現誘導を引き起こさないことが明らかとなった。 2012年3月には研究代表者がロサンゼルスを訪問し、共同研究先である南カルフォルニアパーティクルセンターの研究メンバーとの綿密な打ち合わせ、およびサンプリング地域の状況調査、サンプル回収後の作業確認等を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロアレイを用いた遺伝子発現変化の網羅的な解析により、大気中揮発性成分の生体影響および細胞応答の一端を明らかにすることができたことから、研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、大気中揮発性成分の曝露により発現が増加した代表的な遺伝子群(HO-1,xCT,GCL等)をリアルタイムPCRおよびウエスタンブロット法により検出する。また、これらの遺伝子群はいずれも転写因子Nrf2によって制御されていることから、大気中揮発性成分によるNrf2の活性化を検討する。
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