研究概要 |
1991年の集団治療によるマラリア撲滅以来(Kaneko et al.Lancet2000)、20年間にわたる島嶼住民集団のマラリア感染率について経過を追っているヴァヌアツ南端のアネイチュウム島において調査を行った。乾季の2010年7月および雨季の2011年2月に,それぞれほぼ全島民千人を調査し、原虫陽性者は乾季に診断PCRで確認された熱帯熱マラリア一名のみであった。この感染者は20歳の男性で、マラリア流行が続くタナ島への渡航歴があった。この結果はアネイチュウム島においてmalaria freedomが長期間維持されていることを示すが、そのメカニズムとしての住民主導の役割について検討を行った。また2011年2月の調査は中央部のエピ島と並列で行われ、ポートキミ地域で約500人の住民を調査しギムザ法による顕微鏡診断で約10%のマラリア原虫陽性者を見出し、熱帯熱マラリアと三日熱マラリアがほぼ半々であった。これらの結果はPCRで確認する予定である。アネイチュウムにおけるマラリア撲滅戦略の応用として、ケニアにおける現在長崎大学熱帯医学研究所の研究拠点となっているビクトリア湖周辺スバの高度マラリア流行島嶼における干渉研究の準備を行った。また実験室解析として、熱帯熱マラリア原虫集団の遺伝的多型の度合いは起源と想定されるアフリカからの距離と負の相関を示すことを見出した。
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