研究課題
南西太平洋ヴァヌアツの3島嶼においてマラリア調査を行った。最も南のアネイチュウム島では1991年の集団治療によるマラリア撲滅以来20年間にわたり島内でのマラリア伝播がない状態が維持されている。その対照として同じく南のフツナ島はマラリア媒介蚊がいないため伝播のない島である。北西部のアンバエでは低度の流行が続く。これらの調査結果はアネイチュウム島においてmalaria freedomが長期間維持されていることを示した。そのメカニズムとして住民主導の役割について検討を開始した。上記と並行して、メラネシア島嶼の対照とするケニア・ビクトリア湖島嶼研究対象地においてmalariometric surveyを開始した。調査は乾季終盤である2012年1月から2月にかけてNgodhe、Takawiri、Kibuogi、Mfanganoの4島それに内陸側集落Ungoiで行われた。小学校学童を中心にその周辺の一般住民を対象にして、総計2574名を臨床寄生虫学的に検査した。全体で37%がRDT(rapid diagnostic test)陽性であった。また12歳以下小児の脾腫率は36%であった。RDT陽性率は大きな島であるMfanganoおよび内陸地Ungoiでは50%前後、小さな3島では20%前後と有意な差を認めた。脾腫率も同様な傾向であった。年齢群別RDT原虫陽性率は生後3-4歳までに45%に上昇し、11-12歳まで維持されたあと減少して行き20歳以上では10%前後であった。この年齢群別パターンは獲得免疫の変動を反映していると考えられ、いかなる特異的な抗体の組み合わせが年齢とともに変動するのか興味が持たれる。現在ICIPEにおいて顕微鏡、大阪市大においてPCRによる検査が継続されている。
2: おおむね順調に進展している
主たる理由は現地協力機関の全面的な研究支援体制にある。ヴァヌアツのフィールド調査において保健省の長であるMr George Taleoとは1987以来マラリア研究を共同で行っている。またケニアにおける保健省マラリア対策課のDr Willis Akwaleは2000年から3年間、学位研究のため金子の指導の下、日本に滞在した。
(1)マラリア原虫検査体制を人的および物的両面で充実させていく。検査法としてギムザ法に加えてアクリジンオレンジ法の導入を図る。(2)濾紙に採取したサンプルにより分子疫学および血清疫学的検討を進めていく。また熱帯熱マラリア原虫現地培養株の確立を試みたい。これらの研究は現地と基礎研究をつなげるものである。(3)ビクトリア湖においては1-2月は乾季の調査であったが、8月雨季の終わりに調査を再度行いたい。今後継続的に年2回のペースでマラリア感染の変動を追跡する。(4)G6PD deficiency、HbS、Thalasssemia等の赤血球異常症について現地研究者と共同で検討する。(5)MDA使用薬剤の臨床投与試験を計画する。少量primaquineとartemisininの抗gametocyte効果および安全性について無症候性原虫感染者を対象に検討する。これには中国広州Prof.Liグループとの協力のもと行う。
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