研究課題/領域番号 |
22406008
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
金子 明 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60169563)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 三日熱マラリア / 熱帯熱マラリア / メラネシア / 熱帯アフリカ / 重症マラリア |
研究概要 |
再感染はマラリア撲滅後の主要な関心事である。媒介蚊対策と組み合わせ9週間の週一集団薬剤投与が1991年にアネイチウム島全人口(718)に対して実施された結果、熱帯熱マラリアは消滅し三日熱マラリア(Pv)も1996年以降なくなった。マラリア伝播遮断は2002年1月にPv再燃が報告されるまで持続した。我々はこの流行時に年齢群別マラリア感染率を検討した。アネイチウム島全人口を対象としたマラリア感染率調査が当初のPv勃発報告から6および10ヶ月後の2回実施された。 2002年7月、759島民を調べ22人のPv感染が顕微鏡にて確認された:この内20/298は1991年のマラリア撲滅開始後生まれの小児、2/126は1991-1982年間に生まれた10代であり、1982年以前生まれの成人には感染はなかった(0/339)。高感度のPCR診断によりPv感染は77人に上がり、すべての年齢層に分布していた。年齢群別陽性率はそれぞれ、12.1%、16.7%、6.0%であった(P < 0.001, 若年2群対成人群)。 2002年11月、同様の年齢特異的感染率パターンが見いだされたが、顕微鏡およびPCRによるPv感染はそれぞれ6/746および 39/741であった。尚すべての顕微鏡陽性例はPCR陽性であった。Pv原虫に対する抗体陽性率は年齢によって増加し、1991年以降生まれの小児においては高齢者より有意に低かった。 マラリア撲滅後も持続するPvに対する獲得免疫は撲滅以前に生まれた人たちを防御すると考えられる。この免疫は感染自体を阻止しないが、赤内型原虫感染を顕微鏡検出閾値以下のレベルにまで抑制する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主たる理由は現地協力機関の全面的な研究支援体制にある。ヴァヌアツのフィールド調査において保健省の長であるMr George Taleoとは1987以来マラリア研究を共同で行っている。またケニアにおける保健省マラリア対策課のDr Willis Akwaleは2000年から3年間、学位研究のため金子の指導のもと日本に滞在した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は主としてヴァヌアツ島嶼の対照とするケニア・ビクトリア湖島嶼地域にて、以下の活動を展開する。 研究協力体制の構築: ビクトリア湖Kibuogi島全住民(1000人)を対象にアルテミシニンとプリマキンによる集団治療を中心とした短期集約対策によるマラリア撲滅のfeasibility studyを展開するための現地研究協力体制を確立する。ビクトリア湖マラリア撲滅研究サイトのICIPEにおいて日中およびケニア側参加研究者が集い、地域関係者の参加も得て島嶼マラリア撲滅の全体計画について話し合うとともに関連するアルテミシニン、マラリア伝播の分子および血清疫学および社会経済学的研究の進め方を探る。 住民組織の確立:2014年雨期入り前に予定するKibuogi島での集団治療実施、およびcommunity-directed surveillance確立に必要な住民組織の確立を目指す。住民側と綿密な話し合いを持つと同時にポスドク1名を現地に張り付かせる。 現地調査:撲滅実施に先立つ Kibuogiを含む地理的に連なる島嶼および内陸湖岸村住民集団においてマラリア感染に関する寄生虫学、血清学、分子疫学的調査を島嶼地域間比較における調査を再び7-8月に行う。G6PD欠損症スクリーニングを前回調査でカバーできなかった地域で再び行う。また原虫抗原多型変動の検討を目的とし、熱帯熱マラリア培養株確立を調査と並行して進める。集団治療で使用予定のartemisinin-piperaquineについて投与後の再燃について耐性原虫選択という観点から検討する研究準備を進める。 実験室解析:2012年に得た濾紙採血サンプルについて、熱帯熱マラリア原虫薬剤耐性遺伝子、原虫集団のマイクロサテライト、G6PD欠損症の遺伝子型について解析を進める。また抗マラリア原虫抗体の解析をカロリンスカ研究所で着手する。
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